例年、国立映画アーカイブを会場に開催される『ぴあフィルムフェスティバル』新人の登竜門的映画祭から、今回は、PFFアワードと監督特集からそれぞれ一作品を鑑賞しました。大手配給作品とは一味違った作品に映画の多様性と楽しみを感じることのできる時間でした。
PFFアワード2021から『県民政治』
監督:大場丈夫 92分
いわゆる映画祭コンペの入選作になります。
舞台は、茨城県東海村原子力発電所の再稼働に対する県民投票を請求する市民運動家の奮闘記。
運動は、再稼働に賛成か反対かではなくて、あくまで県民投票を議会に求める請求。
請求には、2か月で5万筆という条件がつきます。
それだけ集めて、やっと決議を議会に求められるわけで。
それを受けて議会は、議題として取り上げるか否かの判断を下すわけです。
議題として取り上げないと採決されれば、それまでです。
民主主義の道のりは険しいですね。
市民運動家は、駅で、街頭で、戸別訪問でやっと集めた8万筆をもって議会へ。
しかし、議会は、ろくに審議もせずに否決。
つまり再稼働賛成、反対を問う県民投票を議題にするかしないかの時点でいとも簡単に否決。
おおよそみていて、絶望感しかわきません。
硬直化した議会、審議中も目をつむり起きているのか寝ているのかわからぬ議員達。
白熱した議論などあるはずもなく、あっさり否決。
新聞記者の質問にこたえる保守党議員のわかったようで、よくわからない説明。
ああ、日本の政治は終わってると嘆きたくなります。
これが実態ですね。
大場監督は、きっちりと描き切っております。
お見事。
しかし、絶望ばかりではね、市民運動家のような活動ができなくても、デモに行けなくても。
選挙に行きましょう。
国政選挙でさえ50%の国では、真の民主主義は育ちません。
監督特集からナワポン・タムロンラタナリット『BNK48 Girl’s Don’t Cry』
監督: ナワポン・タムロンラタナリット 108分・2018年
今回紹介されたのは、タイの ナワポン・タムロンラタナリット 監督
作品は、AKB48のタイ版BNK48のドキュメンタリー映画。
インタビューと楽しいステージ画像を期待したのですが。
ほとんど少女達の繰り返されるインタビュー。
少々ワンパターンで飽きる構成なのですが。
しかし、インタビューを何度も繰り返すことで、少女達の本音が見えてきて秀逸。
そこには、AKB48もそうですが、あくまでも競争原理。
ステージに立てるのは10人少々、あとは入れ替えを待つだけ。
そのための日々の努力、いつ替えられるかもしれない不安がメンバーに緊張感と競争心を絶えず植え付ける。
実に巧みなやり方だなと。
その中で、いつかは舞台にと夢見る少女とレギュラーでありながらその重圧にに苦しむメンバー。
見事に、映像にすることに成功してます。
筆者は、AKB48は子供だましと馬鹿にしていたのですが、見事に計算されたユニットだったと。
「隣のお姉さんのようなアイドル」がコンセプト。
そうなると、コーラスではなく、単純にメロディーラインだけを歌うのも納得。
ただ、『恋するフォーチュンクッキー』を聞くと、歌詞に「人生捨てたもんではないよね」なんて歌詞が出てきて。
子供にそんなこと言われる筋合いにない、なんて歌詞に大人じみた説教くささなんて感じてたんですが。
BNK48はタイ語なのでそのあたりが余計な感情が入らず、素直に楽しい曲だな。
作品は、アイドルになる大変さ、メンバーを維持するプレッシャー。
少女達の本音を見事に引き出してます。
ぴあフィルムフェスティバル公式サイト:https://pff.jp/jp/
国立映画アーカイブ公式サイト:https://www.nfaj.go.jp/exhibition/pff202108/




にほんブログ村
コメント