『冷血』でノンフィクション・ノベルという新しいジャンルの小説を切り開いたトルーマン・カポーティ、しかし、その後一作の長編も書き上げられず60歳でこの世を去ります。アメリカを代表する、スキャンダラスな作家はなぜそのような結末を迎えたのでしょうか。
『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
アメリカを代表する作家トルーマン・カポーティ。
文壇の寵児ともてはやされた彼が、なぜ『冷血』の後小説を書けなかったのか。
いや、『叶えられた祈り』の第一章が発表されるのですが。
ニューヨークの上流階級の実態を描いた作品は、そのスキャンダラスな内容から多くの批判を受け、作品の完成を見ずにカポーティは、この世を去ります。
そのなぜに答えたのが、本作品『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』と言うドキュメンタリー映画です。
まさに栄光と挫折の物語です。
『冷血』で切り開いたノンフィクション・ノベル
1959年に実際に起きた殺人事件を作者が取材をかさね、事件発生から加害者逮捕、そして加害者の死刑執行に至るまで、緻密に小説に再現した作品です。
作者自身が、この様な手法で描かれた作品をノンフィクション・ノベルと名付けました。
2005年に『カポーティ』という映画作品で、カポーティが事件を取材し『冷血』書き上げるまでを中心に描かれております。
現実と小説が同時進行というスリリングな内容なんですが。
カポーティが、犯人や関係者にインタビューする、やがて犯人と絆が生まれ。
そんな中小説では、死刑というラストありきで、現実では犯人の裁判での抵抗で、早くラストを書きたいカポーティの混乱と葛藤があったり。
その辺りが、映画ではカポーティが『冷血』の後小説が書けなくなった要因として取り上げておりますが。
今回のドキュメンタリー『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』では、さらに深くその辺りを探っております。
居場所を失くした、トルーマン・カポーティ
彼の華やかな交友関係は、作家、芸術家、上流階級、国際社会の著名人と幅広いのですが。
とりわけ、ニューヨークの上流階級の方々との華やかな交友関係が有名です。
つまり、同性愛者であり孤独なカポーティにとっては、ある意味居場所であったのです。
当時同性愛は今ほど社会では許容されていませんでしたから。
その彼の特異な性格、おおよそ一般社会では受け入れられない言動でも、ニューヨークの上流階級の社交界は彼を時代の寵児として受け入れていたのです。
しかし、ノンフィクション・ノベルという彼が開拓した手法が、やがて彼のクビを締めることになるのですが。
『冷血』の後に書いた作品『叶えられた祈り』の第一章を発表したところで流れが大きくかわします。
ニューヨークの上流階級のスキャンダラスな面を赤裸々に描いたことで、セレブレティから反発を招きます。
ノンフィクション・ノベルというのが、仇になったわけです。
アルコールと薬物に依存する生活
居場所をなくしたカポーティは、アルコールと薬物に依存する生活に落ちて行きます。
彼のノンフィクション・ノベルという潔癖なまでに事実そのものであることが、仇になってしまったのです。
まさに、栄光と転落を絵に描いたような出来事です。
映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』では、薬物とアルコールに依存しもはや、かつての見る影もないインタビューの姿が、残酷にも映し出されております。
結局『叶えられた祈り』は完成することなく、カポーティは1984年心臓発作で急死してしまいます。
60年間の生涯でした。
コメント