誰にも生まれ故郷はあるもの、その場所がいつまでも自分の中で、宝石の様に輝いていたら、その人の人生は幸福なものになるだろう。たとえそれが、後から作られたものであったとしても、その輝きを忘れずにいられれば、それはそれでいいことなのではないでしょうか。
経済的豊かさと幸福は一致しない。
まさに、そんな見本のような作品です。
監督ケネス・ブラナーの自伝的作品。
北アイルランド、ベルファストでの幼少期へのオマージュであふれています。
当時は決して平和な街ではなかったのですが。
プロテスタント系住民とカトリック系住民の対立。
いわゆるアイルランド紛争が、背景にあります。
それでいて、映画が殺伐としないのは、作者の記憶の中で美化されている部分もあると思うのですが。
労働者階級の家庭に生まれ、裕福ではないにしろ、家族の愛情を受けて育った者の豊かな感性が、作品に生かされております。
まるで、日本の昭和の下町のような人間関係と近所づきあい。
そんな中で、紛争は起るのですが、人々の優しさが失われない。
実際は、違ったのかもしれませんが、映画としてはこれでいいと。
イームスの家具に囲まれたかの様な生活。
シンプルイズベストそんな表現がピッタリの生活様式。
かなり、作られているのでしょうが、これはこれでお洒落だなと思える場面が続きます。
こんな風に、自分の故郷を捕えられる人は、幸せだなと。
誰でも、生まれ故郷はあるのでしょうが。
いいことばかりではないでしょうね。
でも、否が応でもその人の人格形成に多大な影響を与えるのは致し方ないですね。
それでいて、それぞれが自らの居場所を求めて、故郷を後にするのも素敵なことだと。
故郷が、自分にとってベストな居場所とは限らない。
当たり前ですが。
ひとそれぞれ、平等ではありませんし、快適さの感じ方も違います。
労働者階級の人が、富裕層の住む地区に住めたとしても居心地悪いですよね。
アメリカで、白人居住区に黒人の一家が住んでも同じだと。
当然棲み分けといったことが、自然におこなわれるわけで。
経済的や人種的要因だけでなく、自分に合ったレベルも大事だと。
そうして、自分に合った居場所をみつけることは大事だと思うのですが。
自然が好きだ、子供を大自然の中で育てたいといきなり田舎の土地を買って移住なんて、とても危険だと思うのですが。
その地域に溶け込むのは、都会を離れれば離れるほど困難になると、肝に銘じたほうがいいのではないでしょうか。
まあ、映画の内容からは、かなり脱線していまいましたが。
安心して旅立てる故郷を持っているのは、それだけで幸せだと。
そう感じさせる、作品であります。
映画『ベルファスト』公式サイト:https://belfast-movie.com/
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