何となく切ない映画です。
主人公はゲイの黒人少年、その少年の成長記とも言える物語なのですが。
ゲイとして生きて行く少年が、実に繊細で切ない映画です。
アメリカ映画のゲイと言うと、もっとマチョで欲望むき出しと言うイメージがあるのですが。
主人公は、決して欲望むき出しで生きて行くタイプではなく、万事控えめ。
こんな、アメリカ人がいるのかと、少し驚いてしまいます。
大人になった少年は、根本的な性格はそのままです。
何か、僅かな心の揺らぎを映像にする日本映画の様な出来で。
2016年米国公開、2017年日本公開、第89回アカデミー賞で8部門でノミネートされ。
作品賞、助演男優賞、脚色賞を受賞しております。
アメリカも変わったなというのが、私の感想です。
オバマ政権で変わった黒人の地位
2009年ー2017年は、米国初の黒人大統領オバマの政権下でした。
この間の大きな変化は、黒人の生活レベルが向上したことと白人の生活レベルの低下ではないでしょか。
オバマが特別に黒人優遇の政策をしたわけではありませんが。
時代の流れとでも言いますか、オバマ以前からその傾向はあったし、その流れで黒人初の大統領が誕生したともいえます。
作品の中でも、裕福といはいえない母子家庭の主人公ですが。
決して、貧困のイメージはありません。
住環境などは、日本に比べると格段にいいですね。
筆者のボロアパートの狭さに比べたらうらやましい限りです。
トランプはオバマ時代の揺り戻し
一つの流れがあるとやがてその流れに乗れない者たちの逆流が起こる。
それがアメリカラストベルトでうごめく白人達の支持を受けた、トランプの登場ではないでしょか。
そのトランプも2期目を迎えて2020年大統領選挙に臨みます。
米国民は果たして、どんな選択をするのでしょうか。
ムーンライトの下で
そんな、アメリカ社会の変化の中での一人の少年の成長記。
作品が、優しいムーンライトに包まれているのが印象的です。
一人の弱い人間が、生きて行くそれを包む様に。
今後この主人公はどんな人生を歩んでゆくのでしょうか。
いつまでも、ムーンライトが包んでいて欲しいラストです。
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