『青春弑恋(せいしゅんしれん)』台湾映画の新星透明感としなやかさ

映画『青春弑恋』ポスター 映画館

印象派の絵画のような映像、ショパンの「ノクターン」なかなか憎い演出。アジア的であり日本的でもある繊細な描写が印象的だ。西洋文化とは明らかに一線を画すそんな世界を見事に映し出してくれた。登場人物ひとりひとりに寄り添えるそんな時間を共有できる。

ーネタバレを含みますー

岩井俊二を彷彿とさせる

エドワード・ヤン、ツァイ・ミンリャンに続く才能、今、台湾で最も注目を浴びるホー・ウィディン監督作だそうで。https://www.cinemart.co.jp/article/news/20230127006918.html

作品の中で使われているショパンの「ノクターン」がいい雰囲気を作っている。

名曲を使ったからいいとは限らないけど、曲のイメージを上手く映像に置き換えられるのは、才能だと思う。

そういう意味では、岩井俊二監督の映像を彷彿とさせる。

つくづく、日本映画と近いと感じ入ってしまうのですが。

台湾社会にも日本社会と合い通じるものがあるのかと錯覚してしまう。

その穏やかで、静かに流れる時間がいい。

そんな映像の世界を作り出せる監督は、そうはいない。

明らかに、西洋文化とは一線を画すアジア的世界を構築している。

登場人物の心のひだを丹念に

家族がほしいと船のコックをやめ陸に上がった若い料理人、みんな私を捨てたと悲しみに暮れる女性、私クズよねと嘆く女優、コスプレにのめり込む女子高生。

そして、それらを影から覗き見する、引きこもり男。

これらの登場人物を丁寧に描ききっている。

特に、引きこもり男の切ない心情がいい。

狭い世界に住んでいるがため、思いを上手く処理できない

怒りの持って行き場を短絡的に求める。

社会性が、著しく欠如しているから、その行動は突拍子もなく、悲劇的だ。

惜しむらくは、この引きこもり男の配役

内側に、強力な負のエネルギーを持っている男性なんだけど。

物足りない。

あまりにも、普通の男性に見えてしまう。

社会から、断絶まではいかないにしろ。

隔絶した自分だけの世界に生きる男をもっとアピールしてほしかった。

そんな複雑な心情の持ち主なのに、スッキリした顔立ち

なんか違和感を覚えてしまう。

台湾に限らず、日本でもいや世界的にも、自分の世界だけが肥大化してゆくことの怖さ。

そんな世界を実に清楚な映像の中に表現した。

稀有な才能だと

映画『青春弑恋(せいしゅんしれん)』関連サイト:https://www.cinemart.co.jp/article/news/20230127006918.html

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