ドキュメンタリー『青春』。巨大マーケットを支える中国経済、そんな只中で歯車となって稼ぎまくる若者たち。ワン・ビンの捉えた彼らの日常とは、時代に社会に飲み込まれながらもしたたかに生きる若者たち。かつての日本もそうだった、そして彼らの行きつく先は
ーネタバレを含みますー
優れたドキュメントを送り出すワン・ビン
舞台は、中国上海長江デルタに位置する織里という街の小さな衣料品工場。
そこで働く、農村部出身の10代〜20代の若者達の日常をカメラは追う。
物凄い勢いでミシンをかける若者たち。
決して大手の工場ではないけど、それなりに収入がある。
彼らは、高卒だろうか中卒だろうか、よくわからない。
ただ、インテリ層でないのは、まちがいない。
まず、その生活の場が雑然としている。
仕事場は、まあそれなりなんだけど。
彼らの住居、寮が汚い。
一つの部屋にベッドが五・六台置かれているだけ。
そこで雑居生活。
プライバシーもへったくりもない。
だけど彼らは、そんなことは気にしないみたい。
なにせ最近まで公衆トイレにドアがなかった国。
プライバシーという概念そのものがないと言ったら、失礼だろうが。
子供の頃から、共産主義国家の集団生活になれているからだろうか。
![漁師](https://i0.wp.com/himabu117.com/wp-content/uploads/2023/06/fisherman-2739115_640-2.jpg?resize=600%2C153&ssl=1)
生活の中心は「スマホ」
これは、万国共通だろう。
とにかく暇さえあればという感じ。
パソコンではない、まあそんなスペースもない、一人ベット一台の私生活。
だけど着るものは、それなりに見栄えのする若者ファッション。
そのあたりは、衣料品工場ということもあるのかな。
しかし、食生活はお粗末。
まあ、若者だけの共同生活だからこうなるだろなと思うのだけど。
ほとんど、野菜なしの炭水化物生活。
年取ったらガタくるぞ、なんて忠告したくなる。
部屋は汚し放題、あちこちにゴミが散らかり。
たまに掃除でまとまったゴミは、階段から大きなコンテナ袋で、階下に投げ捨てる。
階下に人がいたら大怪我するのに、「夜中だから歩いている人などいない」と平気。
ルール、きまり、あってないような世界。
日本の昭和40〜50年代をさらにパワーアップした感覚だろうか。
とにかく、彼らは、稼ぐことに夢中だ。
こんな彼らの働きが、私達のファストファッションを支えているのだろうか。
舞台は、2014年〜2019年だから、現在とはまた様子が違うのかもしれない。
しかし、最近の「SHEIN」や「TEMU」など中国ブランドの躍進を見ると、まだまだ中国は、元気なのかもしれない。
バブルは終わる
景気はいつかは後退する。
いや、もうそうなのかも、だけど中国のその実態は、決して外にはもれてこない。
映画の時点の若者たちは、出身地の農村部に豪邸を建てていた。
あの年代だもの今が良けれは、後のことなど考えない。
日本だって、高度成長期には、地方出身の中卒の集団就職があり、彼らは「金の卵」ともてはやされた。
その姿と重ね合わせてしまう。
ただ、二十代半ばで豪邸は無理な話だけど。
それだけ中国経済の爆発力を見る思いがする。
ただ日本の場合、わりと長いあいだ好景気が続いたことで、社会整備ができたこと。
つまり社会福祉の分野で、医療保険や年金などなど。
中国は、進化も早かったけど、後退も。
おそらく社会のインフラや福祉の分野でどうなのだろうか。
都市部と農村部の格差。
医療体制、年金や介護問題。
一人っ子政策の失敗もあるはずだ。
ただ、映画『青春』の主人公たちからは、そんな影は微塵も感じられない。
そうだろう。
ただ、その後どうなったのか興味深い。
中国社会の動向に。
そして、ワン・ビン監督の次回作に大きな興味が湧く。
映画『青春』公式サイト:https://moviola.jp/seishun/#
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