3時間38分が長すぎると感じさせないドキュメンタリー映画です。普段私たちの馴染みのない東ヨーロッパ、それも旧東ドイツの今昔、ある一家の百年、そう書くと退屈しそうですが。そこは魔術師的な製作者の手でこの上もなく上手く料理されております。
3時間38分の超大作
トーマス・ハイゼ自身が語るハイゼ家の百年。
そこには、19世紀後半から現在に至るまでのハイゼ家の足跡が、日記、手紙、写真などでハイゼ自身が語ります。
映像は、モノローグ。
こう書くと退屈な作品に思えてくるのですが。
上映時間ほどには、長く感じないところが不思議な作品なのですが。
19世紀から始まるハイゼ家の足跡ですから。
それぐらいの長さになるのでしょか。
あまり私たちには馴染みのない、東ヨーロッパ。
トーマス・ハイゼってどんな人
1955年生、出身地東ベルリン。
1970年代後半から旧東ドイツでドキュメンタリー映画を製作してきた人です。
祖父からの三代記がこの作品では描かれています。
父が哲学者であることからわかるように、いわゆる労働者階級ではなく、社会的には、かなり高い地位にいた一家であることがわかります。
ただ、祖父がユダヤ人の女性と結婚したことでわかるように。
当時のヨーロッパの反ユダヤ主義の迫害をうけます。
そのあたり、のこされた手紙、日記などがでてくるのですが。。
このような系図がわかってないと、誰から誰への手紙なのか分からず、話の内容についていけなくなる場面も多々あります。
時代は、第一次世界大戦からナチスの台頭、ユダヤ人迫害、ホロコースト。
第二次世界大戦、そして敗戦によるソ連の進軍、共産圏での生活、ベルリンの壁とその崩壊。
まさに激動の100年がかたられるのですが。
映し出される映像は、鉄道や田園風景、朝の駅の通勤風景など。
あまり映画の内容とは、関係ないのですが。
不思議な映像的魅力。
絵画のように、ワンショットで一つの風景を長写しします。
それが、退屈するというよりも、どこか絵画を鑑賞してるかのような不思議な感覚に襲われます。
それもモノローグなので、見るものにとってはそこに自分の感情を書き込めるとでもいいましょうか。
しかし、旧東ドイツは、なじみがないので、これが東ドイツなのかなと。
以前見た映画『希望の灯り』https://himabu117.com/archives/265
でも感じたのですが、殺風景なんです。
雪のない2月の関東平野の風景とでもいうか。
草木も少ないし、意図的にひとを映していないのかと思えるぐらい、殺風景で。
特に、朝の通勤風景でしょうか、混雑した駅なんですが、広告というものが一つもないんです。
私たちの町には、広告の看板があちこちにあふれているのですが。
それが、一枚もないんです。
また、背広を着た人が一人もいないというのも不思議です。
私たちの常識が世界の常識ではないんですね、世界は広いなと。
近代史における旧東ドイツの貴重な資料のもりこまれた作品であるのは疑いの余地はないのですが。
それ以外にも非凡な才能を持つ、トーマス・ハイゼの切り取った風景を眺めるだけでもいいのではないかと。
眺めながら、旧東ドイツの今昔が入ってくれば、まさに製作者の思うつぼでは。
はまってみてはいかがでしょう。
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