映画『希望の灯火』旧東ドイツの現在、豊かさから離れた世界で

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ドイツといっても東もあれば西もある

2018年ドイツの映画です、2019年日本公開の作品です

監督トーマス・ステューバー、 渋谷アップリンクで2020 年1月「見逃した映画特集2019」という好例の上映で見ました。

さすが、見逃した作品と名打ってるだけに、よい作品でした、さらに入場料1300円はうれしいかぎりです。

舞台は、旧東ドイツです、近くにアウトバーンが走る田舎の巨大スーパーが舞台です

なにもない、殺風景な所にポツンと立つスーパー、こんなところに客が来るるのかなとも思えるのですが、車社会なんでしょうね、そこそこ繁盛してるようで。

そんな職場、働く人たちの人間模様が、丹念に描かれた秀作です。

ベルリンの壁が崩壊したのが、1989年あれから30年東西ドイツがひとつになり、ベールに包まれていた、共産圏東ドイツが西側に吸収されました。

旧西ドイツ優位と言われた経済格差、西側に雪崩れ込む旧東ドイツ住民、あれから30年の時を経て、旧東ドイツの人々の日常は、どんなものか関心がありました。

スーパーで働くということ

筆者も50代で失業した時、次の仕事を見つけるつなぎに。大手スーパーで1年半ほど働いた事があります

アメリカでも、失業したらまずはウオルマート(アメリカの大手スーパー)からという言葉があるように、非正規、パート、アルバイトの代名詞のような職種です。

この作品でも、そんな傾向は感じるのですが、パート、アルバイトというよりも田舎で他に職がないという感じがします。

どちらにしても、売り場で働く人たちは、他からの転職(主に失業)、あるいは主婦が多く働くという傾向は、洋の東西を問わないようです。

この映画で描かれる、スーパーの様子。

まず、制服がお洒落です、そんなに経済的に豊かな地域とは思えないのですが、主人公27歳のクリスチャン(男性)はシャツコートのようなボタンのないブルーの制服を渡されます。

これが実にお洒落に見えます、まるで無印良品で売っているかのようで、オリンピックでも旧東ドイツのユニフォームはブルーやネイビーを使ったものが多いですね。

スーパーはやたら広く、IKEAの資材倉庫のようなところが、在庫置き場兼売り場という感じの作りです。

合理的と言えば合理的ですが、低速のフォークリフトの行き交うところで、買い物をするわけです。

まあ、主人公の勤める時間帯は遅番のようで、店が閉店してから、品物の補充する場面が多く、お客の多い時間は、そんなにフォークリフトは行き交わないのかもしれません。

スーパーで働いた経験からすると、実にのんびりしてるな(田舎だからかもしれませんが)と感じます

日本人がせっかちだなとつくづく感じます、映画の中の従業員たちは、時間に追われてせわしなく動くということはまずなく、かといって怠けているようでもなく、ただ黙々仕事をこなすとでも言うべきか。

なんとなく、日本人との国民性の違いのようなものを感じます

主人公の淡い恋心

そんな毎日のなかで、主人公は、同じ職場の年上の人妻に恋心をいだきます

実らぬ恋との間に苦しみながらも、日常は淡々と過ぎて行きます。

この淡々とした流れこそがこの映画の魅力です。

そんなある日、職場で新人の主人公に先輩として良くしてくれた同僚ブルーノ(およそ50代後半か)が自殺してしまいます。

職場の同僚は、ひどく悲しみます、なぜ自分に相談してくれなかったのか、何を苦しんでいたのか、あれほど人が良く面倒見の良い人がなぜ。

最後までその原因はわかりませんが、筆者には何となくわかる様な気がします。

孤独ということ

ブルーノは主人公に、東ドイツだったころのトラック運転手時代を懐かしむように語ります。

そして、現在は妻とも別れ一人暮らし。

孤独を紛らわすことができなかったのでしょうね。

人間は、一人になると本当に弱いいき者です

孤独と戦っても意味ないことです

自分が、自分がといきがってみても、ただ周りから支えられて初めてできているに過ぎないことが、ままあります。

そんな自分を、本当の自分だど錯覚してる人が多いのではないでしょうか。

秋田県が、自殺率ワーストから抜け出せた取り組みは、孤独な老人を一人きりにさせない事でした。

ただ、寂しさを紛らわせながらやっているに過ぎない存在だと思うのですが。

生きる目的は、人生とは何ぞや、そんなに固く構えなくてもいいのではないでしょうか。

何かごまかせるもの、例えば、お酒、ギャンブルに夢中だったら自殺しなかったかもしれません。

しかし、それらは時として生活や健康の破綻という結果になることもありますね。

ブルーノの孤独は想像でしか分からないですが

本当に、人間って弱い存在なんです、その弱さを知ることが、生きる力になるのだと

主人公は、ブルーノにかわって、売り場責任者として淡々と仕事を続けます。

映画は、そこで終わるのですが、悲しい結末というのではありません。

何か小さな喜びを見つけて生きてゆくのが人生だと語っている様に思えてならないのですが。

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