『ファースト・カウ』ケリー・ライカートが描く西部、繊細な感性が光る

映画『ファースト・カウ』ポスター 映画館

映画『ファースト・カウ』、アメリカインディーズ映画シーンでは、欠くことのできない女性監督、ケリー・ライカート。繊細でこまやかで、いままでのアメリカ映画では感じることのない人間の息遣いが伝わってくる。彼女の描き出すアメリカに興味が尽きない。

『キラーズオブザフラワームーン』とは対局

同じ西部を舞台にしても、ここまで違うのか。

キラーは、西部開拓時代ではないけど。

西部開拓時代から続く、荒くれのイメージを踏襲した作品。

アメリカインディーズ映画シーンを騒がす、ケリー・ライカートが西部を描くと。

ケリーが女性ということもあるだろうか。

着眼点、物語の展開、セリフ、一つ一つに細やかな配慮をかんじてしまう

たしかに、西部開拓時代の荒々しい世界なのだけど。

そこには、確かに優しさがあり、絆があり。

優しさと絆が、ケリーのキーワードだろうか。

確かに、荒くれや無法者が横行する西部開拓時代でも、人々の生活は、地味で質素で。

ケリーは、過去の作品でも、西部開拓時代をそんな観点から捉えている。

漁師

相棒の登場するケリー作品。

『Old Joy』しかり、『ウェンディ&ルーシー』しかり。

ケリー作品には、相棒が登場する。

それは、人間ばかりではなく。

『ウェンディ』では、雑種の犬であったり。

けっして孤独がテーマではなく、相棒と立ち向かう人生だったりする。

互いにいたわりあい、支え合い。

それが、不自然ではなく。

けっして、互いに依存する関係ではなくて。

厳しい現実の中で、あるいは必然とも伺える関係で、助け合う。

無法時代の西部であっても、殺伐とした現代社会でも、その姿勢は崩れない。

このあたりが、ケリー作品の根底に流れるものか。

ケリー作品に見るアメリカ

いままでのアメリカ作品にはない、心のふれあいがテーマになることが多い。

感性からゆくと、日本人に近いのかな。

そう思えてしまう。

しかし、私が知らないだけで。

ケリー・ライカートの描くアメリカも、ひとつのアメリカの側面なんだろうと

ケリーは、庶民のありのままの姿を描くのが得意。

裕福ではない、日々の生活で手いっぱい。

アメリカ社会の厳しさが、伝わってくる。

でもそんな中で、ただひたむきに生きる

そんな素朴なテーマがいい。

映画『ファースト・カウ』公式サイト:http://firstcow.jp/

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