日本近代演劇史に残る劇団なんですが。
“1917年芸術座(島村抱月主宰)を脱退した澤田正二郎らによって結成。歌舞伎よりもリアルな立ち回りを多用した作品で男性客の人気を得る。1929年に澤田急死の後、若手の島田省吾、辰巳柳太郎を主役に抜擢、戦前から戦後にかけて全盛期を謳歌した。”(ウィキベディアより)
ざっと、こんな感じなんですが、劇団は残念ながら1987年に創立70周年記念公演を最後に解散してしまいました。
代表的演目としては
『大菩薩峠』『王将』『国定忠治』『沓掛時次郎』などがあります。
とかく、ジェンダーフリーという昨今の時代の流れからするといささか古くさいと思われるでしょうが、男気というものを売りにしていた劇団です。
そうそうたる座付作者たち
長谷川伸、北条秀司、池波正太郎という顔ぶれを見てもわかるように、今では考えられない様な作者が名を連ねておりました。
その人気は凄まじいもので、全盛期には歌舞伎おも上回る人気を博しておりました。
もうなくなってしまったので、残念でしかたないのですが。
私が新国劇の舞台にはじめて接したのは、1975年の歌舞伎座公演でした。
その時、島田正吾主演の『沓掛時次郎』の舞台を3度観に行ったのをよく覚えております。
相手役に藤間紫で、自分が殺めた相手の女房と子供を守るという任侠の物語ですが、なかなか見ごたえがありました。
役者も作品も良かったんでしょうね、作者は長谷川伸でした。
島田正吾もこの作品が気に入ってたのだと思うのですが。
劇団が無くなった後も、一人芝居で何度も再演されておりました。
この劇団凄さを味わえるのは、残された映画だけになりました。
劇団の殺陣師(たてし)を主人公にした映画が3度作られております。
『殺陣師 段平』という作品です。
殺陣師とは、劇中の立ち回りを指導演出する人のことです。
1950(昭和25)監督マキノ正博、主演月形龍之介
1955(昭和30)監督マキノ雅弘、主演森繁久彌この時は『人生とんぼ返り』という題でリメイクされました。
1960(昭和37)監督瑞穂春海、主演市川雷蔵
わたくしは、1950年盤を京橋フィルムセンター(現 国立アーカイブス)でみました。
まさに当時の新国劇の人気の凄さがうかがえる内容でした。
観客もまるで、ロックコンサートのノリのような興奮ぶりで、今の観客がおとなしすぎるのかなと思えるぐらいの熱狂が伝わってきました。
どうか残されている映像で、この劇団の凄さを味わってください。
一度なくなってしまったものは、もうもとには戻りませんが。
それも時代の流れというものなのか。
非常に惜しい気持ちはありますが。
あの劇団の舞台に生で接しられたことは、幸せだったと思っております。
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