劇団新派という劇団ご存じでしょか。
それは、明治時代に生まれた、歌舞伎「旧派」に対して新しい芝居「新派」という流れのなかで生まれたお芝居のことをいいます。
特徴は、歌舞伎は、主に江戸時代を扱った作品やそれ以前時代がその背景となりますが、新派は、その作品の多くは、明治時代にその背景をおきます。
私が、新派の芝居を初めて生で見たのは、1975年(昭和50年)新橋演舞場の一月新春公演です。
その時見た、「歌行燈」(泉鏡花作)をよく覚えております。
其のころの劇団新派は初代水谷八重子の全盛期で、その芸もまさに完成期に入ったころでした。
その傑出した演技は他の追随を許さず、すばらしものでした。
なぜ、劇団新派は衰退したのか
其のころは、毎月の様に新派公演があり興業として成り立っていたのは、ひとえに看板女優、初代水谷八重子の力によるところです。
残念ながら、八重子亡き後(1979年74歳没)の現在は、年三度ぐらいの公演でしょうか。
それほど、八重子の演技はずば抜けておりました。
まさに、原作のもつ世界を見事に舞台に再現できる、稀有な女優でした。
今は、残念ながら新派の舞台に多くを期待できないのが現状です。
代表的な作品は
「金色夜叉」 (尾崎紅葉)
「婦系図」 (泉鏡花)
「滝の白糸」 (泉鏡花)
「日本橋」 (泉鏡花)
「明治一代女」(川口松太郎)
「鶴八鶴次郎」(川口松太郎)
「女将」 (北条秀司)
その他にも、八重子が自らの当たり役の中から10種をえらび「八重子十種」とした演目が以下にあります。
「大尉の娘」 (中内蝶二)
「風流深川唄」 (川口松太郎)
「滝の白糸」 (泉鏡花)
「花の生涯」 (船橋聖一)
「明日の幸福」 ( 中野實 )
「皇女和の宮」 (川口松太郎)
「十三夜」 (樋口一葉)
「鹿鳴館」 (三島由紀夫)
「明治の雪」 (北条秀司)
「寺田屋お登勢」(榎本滋民)
舞台となったのは、おもに明治時代
作品群からもわかるように、おもにその舞台は、明治時代でした。
そういう意味では、日本の大衆演劇史の中でも明治という一つの時代を中心とした舞台はとくしゅだともいえます。
江戸時代の鎖国が終わり文明開化の世となった日本、まさにその空気をそのまま残す舞台というものは貴重だともいえます。
また、新派というネーミングから、西洋的な演劇を想像されるかもしれませんが、あくまでも歌舞伎の流れから発生したものととらえた方が、いいと思います。
歌舞伎の作品の中にも明治以降を題材にした作品もあり、散切物(ざんぎりもの)と呼ばれる作品群があります。
江戸時代髷(まげ)を結っていた人達は。髷を落とし西洋的な髪形になってゆくわけですが、そこから髷を落とした人が登場する作品を「散切物」と呼びます。
新派は、あくまでも歌舞伎をベースとしてます、当然舞台には花道もあります。
新派人気は、復活するか?
それは、現状ではかなり難しいと言わざるを得ません。
やはり明治という一つの特殊な時代を中心としていることもその原因とも言えるでしょう。
しかし、それをするからこそ新派の新派らしさがあるのも事実です。
では、このまま消えてしまうのでしょうか、それも寂しいですよね。
明治という時代を体感できる、数少ない劇団ですから。
また、その多くの作品群を楽しむ機会が少なくなるのも寂しいですね。
望まれる、傑出した役者
しかないですね、近年歌舞伎界から、新派に加わる役者さんがちらほら見られます。
いい流れだと思います。
やはり、新派の舞台には、劇団生え抜き、あるいは歌舞伎役者がよく似合います。
実力のある役者さんが多く加わり、その中から、傑出した役者さんが出てくると面白いですね。
そうなることを願ってやみません。
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