長谷川伸と股旅物
股旅物とは、小説・演劇・映画などで、各地を流れ歩く博徒などを主人公にした、義理人情の世界を描いたものです。
長谷川伸の代表作としては、『沓掛時次郎』、『瞼の母』、『一本刀土俵入』、『関の弥太っぺ』などが、あげられるでしょうか。
長谷川伸(1884~1963)は、劇作家・小説家であり、大衆文学の巨匠です。
明治~昭和にかけて隆盛を極めた劇団新国劇の座付き作者とも言える人で、後輩というか彼の弟子にはあの池波正太郎がおります。
いまでは、本屋で長谷川伸を探してもなかなかお目にかかれないと思いますが、一時代を築いた作家です。
昨今では、上演されることは少なくなりましたが、その作品の世界は捨てがたい魅力にあふてております。
昭和58年11月歌舞伎座公演で見てゆきましょう。
11月歌舞伎座公演という事でまず昼夜の演目から見てゆきましょう。
- 夜の部1福沢諭吉(フクザワユキチ)
- 夜の部2積恋雪関扉(ツモルコイユキノセキノト)
- 夜の部3心中宵庚申(シンジュウヨイゴウシン)(公益法人 日本俳優協会 歌舞伎データベースより)
昼の部の最後に『一本刀土俵入』が上演されてますね。
では、次に出演者を見てみましょう。
配役
駒形茂兵衛 = 中村勘三郎(17代目)
安孫子屋酌婦お蔦・お蔦 = 中村歌右衛門(6代目)
船印彫師辰三郎 = 實川延若(3代目)
波一里儀十 = 中村吉右衛門(2代目)
船戸弥八 = 片岡我當(5代目)
子分掘下根吉 = 中村勘九郎(5代目)
安孫子屋酌婦お吉 = 中村松江(5代目)
安孫子屋酌婦お松 = 中村東蔵(6代目)
町人伊兵衛 = 市村家橘(17代目)
安孫子屋料理人辰吉 = 市川銀之助(初代)
河岸山鬼一郎 = 片岡芦燕(6代目)
老船頭 = 市川子團次(2代目)
若船頭 = 尾上松鶴(2代目)
清大工 = 助高屋小伝次(2代目)
安孫子屋酌婦おせき = 中村児太郎(5代目)
伊兵衛女房おみな = 大谷友右衛門(8代目)
(公益法人 日本俳優協会 歌舞伎データベース)より
ざっと見るとこんな感じですが、かなり豪華な顔ぶれとなっております。
毎年11月は、東京の歌舞伎座が顔見世興行ですから。
顔見世興行とは、プロ野球で言うとオールスター戦、歌謡界だと年末の紅白歌合戦でしょうか。
おもだった俳優さん総出演となっております。
ちなみに、顔見世興行は年二回でもう一回は、12月の京都南座となります。
顔見世興行というとお馴染みの演目が並ぶことが多いのですが、この年は珍しく、昼の部3で『一本刀土俵入』、夜の部1で『福沢諭吉』が上演されております。
いわゆる、新歌舞伎と言われるもので、明治以降に作られた作品群をさします。
その中でも歌舞伎の為に書かれたわけではない、劇団新国劇の当たり演目である『一本刀土俵入』を取り上げてますね。
劇団新国劇は明治以降歌舞伎より派生した、よりリアリズムを追及して一時代を築いて劇団です、その当たり演目を逆輸入ではないですが、歌舞伎としてどう演ずるか見ものですね。
立ち回りにその違いが現れている感じがします、殺陣は明らかに歌舞伎調ですね。
では、名舞台をお楽しみ下さい。
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