『すばらしき世界』自分は幸福感を抱いて生きているのだろうか。

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元殺人犯の主人公の社会復帰の物語、そう言ってしまうと簡単に聞こえますが、そこで出会う人々、ぶち当たる壁それらが丁寧に描かれた作品です。ヤクザの世界しか知らなかった主人公、カタギの世界はどう映ったでしょう。いろんな事に思いが巡る、そんな後味が残ります。

実在の殺人犯の人生

直木賞作家、佐々木隆三の「身分帳」が原作です。

監督は、西川美和

佐々木隆三の原作では、『復讐するは我にあり』が有名で、映画作品としても秀逸な出来になっております。

その作品のイメージが強かったのですが、『復讐するは我にあり』が映画化されたのが、1979年

『身分帳』が発表されたのが、1990年

今回は、原作の時代を現代に置き換えて作られております

13年の刑期を終えて出所した男の社会復帰の物語。

彼は、元ヤクザで、いわゆるカタギの生活の経験のない男です。

刑務所とヤクザの世界しか知らない男の奮闘記とでも言いますか。

「生きてゆくのが嫌になる映画は作りたくない」

これが、西川監督の作品に対する言葉です。

まさに、作品はその言葉をよく表しております。

刑期を終えた元殺人犯の社会復帰。

そう簡単に行くわけはありません。

彼を取り巻く人々は、彼に対して優しい人が多く出てきます。

本当に、こんなにいい人ばかりなのかなと思ってしまうのですが。

見る者に希望を持たせてくれる作品であることは、確かです。

実在の人物で、社会復帰をなしたのですから、紆余曲折しながらと言うのは、感じ取れます。

主人公は、一本気と言いますか。

感情のコントロールが上手くできない

間違ったことに、見て見ぬふりができない所があり。

なかなか、こんな人が社会人としてやって行くのは難しいですね

そんな役どころを、役所広司が上手に演じております。

自分を出来るだけ出さず、感情をコントロールする

社会でやって行く方法で、私達は、それを当たり前のようにやらなければと思っています。

「自分は幸福を感じて生きているのだろうか」

映画の中で、主人公とかかわるテレビ局の人間の言葉が、耳に残りました。

社会生活は、みんなからはじかれたくないから合わせているだけ、幸福感なんて感じた事はない

確かに、私も同じです。

転職に失敗して、非正規としてギリギリの生活。

金はないけど、自由な時間はある」自分にそう言い聞かせる毎日。

確かに、生活に必要な最低限の生活費の為の労働時間で、自由になる時間は、正社員の頃に比べるとはるかに多いのですが。

では、幸福を感じる生活ですかと問われると。

自分にとって幸福とは一体なんだろうと、答えが見つかりません。

コロナ禍で、その影響を受けずに仕事が続けられるというだけで贅沢な悩みなのですが。

この作品を見ていると、幸福とは一体どんな

そんな事が、しきりと頭に浮かんできます。

主人公の生きてきた社会、罪からの服役、そして、社会復帰。

裏と表両方の社会を生きてきた主人公に、ぜひ尋ねてみたいですね

もう、かなわぬことなのですが。

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