韓国映画『パラサイト』がアカデミー賞の快挙
2020年アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、国際映画賞を受賞いたしました。
英語以外の作品が作品賞に輝くのは初で、まさに快挙といえます。
『パラサイト』についてはいまさらここで語る必要もないほど、その評価は高いものがあります。
ただ、以前からポン・ジュノ作品を見ているものにとっては、『パラサイト』は重たい題材をライトに、描いている気がします。
確かに、今までのポン・ジュノ作品のような描き方をすると、欧米人には、ある種の拒否反応が出るような気がします。
そこをあえて出さず、ライトにしたことで、賞に近ずいたのではないかと考えております。
そういう意味では、賞狙いできたのではないかと勘ぐってしまいます。
勿論それは悪いことでもないし、狙って取れる賞でもないし。
賞にねらいを定めて作品を構成、完成させることは常人にできる技ではなく、まさにその力量は驚くべきものがあります。
そして、賞取りレースの中で、上手く流れに乗れたのも事実です。
それは、アメリカ社会の変化と言うべきでしょうか。
ジェンダーフリー、少数者に対する社会の目の変化とも言うべきでしょうか。
その片方で、まさにその対局にでもいるかのような超保守的な人物が大統領をやっているのも不思議な国だなと思うのですが。
いかにもちぐはぐのようでいて、あらゆる階層・人種の意見のバランスを取っているかのように感じています。
ポン・ジュノという監督
韓国延世大学社会学科卒業の超インテリです、その後韓国映画アカデミーに再入学、1969年生まれの50歳、映画人としての活動は、1993年で現在にいたっています。
主な作品は次の通りです。
『殺人の追憶』(2003年)
『グエムル・漢江の怪物』(2006年)
『母なる証明』(2009年)
『スノーピアサー』(2013年)
『パラサイト 半地下の家族』(2019年)
そして今回取り上げる『殺人の追憶』は長編2作目となります。
『殺人の追憶』長編2作目にして、驚くべき完成度
2000年頃から東アジアで韓国大衆文化の流行、いわゆる韓流のブームが起こります、日本でも2003年『冬のソナタ』放送が契機となり一大ブームが起こります。
ポン・ジュノ監督の作品も韓流ブームの一つと言うべきなのかと言うと、違う流れだと思います。
韓国映画には、いわゆる韓流に代表される甘い男女の恋愛を題材とする作品と、それとはまるで違う、人間のドロドロした部分を題材とした作品群があります。
ポン・ジュノ監督の作品は、まさに後者に属するものではないでしょうか。。
作品によっては、すべてその範疇にあるとは断言できないのですが。
そして『殺人の追憶』は、韓国の軍事政権下1980年代後半に発生した華城連続殺人事件を巡る刑事たちの物語です。
まさに韓国映画の本領発揮とも言える、醜い人間の姿や本性、それらすべてをこれでもかこれでもかと画面に叩きつけてきます。
これこそが韓国映画の醍醐味とも言える作品ではないでしょうか、映像としてのドラマの構成、テンポの巧さ130分があっという間に過ぎてしまいます。
そして、見終わったあとに感じる、つくづく人間とはわからないものだ。
人間とはわからないものだ、という感覚は、人間の本質を突いているのではないでしょうか。
アカデミー賞監督ポン・ジュノの力量・才能を余すところなく伝える本作品をどうぞ一見してみてください。
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