『atBaywalk-ベイウォーク-』困窮老人のサバイバル自己責任か

映画『atBaywalk-ベイウオーク-』ポスター 映画館

笑うなら笑え、俺たちは生きている。そんな叫び声が聞こえてきそうな『atBaywalk-ベイウオーク-』。フィリピンの裏路地の困窮邦人、結末は見たあなたが判断して。粂田剛監督の渾身の作品間違いなく一見の価値あり。大人しく生きるだけが人生ではない。

増える老人、夢のあとに待つ老い。

『なれのはて』に続く、本作『atBaywalk-ベイウォーク

フィリピンで一旗揚げよう。

儲け話に乗ろう。

少ない年金だけど、フィリピンなら優雅な生活ができるのでは。

そんな、下心を持ってフィリピンに来た男たちの末路。

上手くいったときもあったけど。

いまは、一文なし。

いわゆる食い詰め者たちの物語

自業自得と言ってしまえば、それまでですが。

誰だって、魚心あれば下心。

フィリピンに来たときは、元気だったけど気がついたらもういい歳に。

すでに、日本に帰る旅費もない。

そんな、邦老人のドキュメント。

粂田剛監督の仕事ぶりがよく出ている。

昨今の映画は、何々製作委員会なるものをつくり資金集め。

決まった予算と決まった期間で、そこそこリターンが見込める。

当然、安全策みたいな中途半端な映画が多い。

そんな中、粂田剛監督の映画作りが光る

今回のフィリピンの困窮老人にとことん付き合っている

そう、納得できるまで

そんな、監督の心意気が、画面から伝わってくる。

だから、見る者も消化不良にならない

とことん作品に付き合える

印刷工として働いたS氏

国内にも多数の困窮老人が。

高齢化社会を迎え、確実に増えている。

フィリピンとの大きな違いは、日本は最後には国が面倒を見るということか。

わたしも、訪問介護の現場で、生活保護の老人のお世話をする。

ある60代後半のS氏。

六人兄弟の末っ子として、東京都内に生まれ、父親は公務員。

幼少期は、親戚の住む離島に預けられ、その後高校卒業後は、印刷工として働く。

結婚歴はなく、今で言う非正規的立場で晩年を迎える。

こういう人たちは、概して自分の転落の軌跡を語りたがらないし、こちらも聞かない。

仕事は、もうしていない、日中主にアパートの一室で、DVDを見て過ごす。

あとは、酒、酒、酒。

本人に、経済的管理がしっかりできないので、代わりに福祉課が、それをやる。

いわゆる生活保護で、彼が公共料金を払うことはない。

毎週、区の職員が一万円を持ってきて、彼はそのお金で食費をまかなう。

仕事はやろうと思えばやれるが、やらない。

なぜなら、仕事して報酬が出ると、その分保護費が減らされるから。

ある意味、いたれりつくせりとも言えるし。

人間をやめたとも言える

そう、楽しみのために貯蓄はできないし、なにか欲しい物のために貯蓄をすることはできない。

ラスベガスや歌舞伎町で鳴らしたバブル紳士D氏。

もう一方は、サービスに入ると必ず聞かせられる、ラスベガスのカジノと女の話。

とくに賭け事は年季が入っていて、軍事政権下の韓国のカジノの話もよく聞かせられる。

台湾で、豪華円卓に美女と20数名対1で並んだお話とその晩の活躍。

ほぼ、世界中ともいえるカジノと女のお話。

今は、窮屈で日当たりの悪いワンルームで生活保護。

彼もなんでこうなったかは決して話そうとはしない。

よく口にするのは、「99回の成功と1回の失敗で没落してしまうタイプ」の人間がいる。

自分は、そのタイプだと。

増える困窮老人

当たり前だけど、高齢化社会を迎えてますから。

誰もが、迎える老いというテーマの中で、今まで通り日本政府も保護してくれる保証はない。

そんな中で、いかに生き延びるか。

まさに老人サバイバルの時代が、もうそこに来ている。

かといって、『atBaywalk-ベイウォーク』の老人のような賭けはできない。

映画のフィリピンの困窮老人を笑えないですよね。

彼らは、欲のためといっても。

どこか、人間らしい。

一発当ててやる。

とても怖くて私にはできないけど。

その結果が『成れの果て』であり『atBaywalk-ベイウォーク』

他人事ではない現実が、もうそこまで。

映画『atBaywalk-ベイウォーク』公式サイト:https://atbaywalk.com/

コメント