異常者の立場から描れた珍しい作品『アングスト(不安)』上映禁止

映画フィルムのイメージ画像 映画館

本国では1週間で上映禁止

1980年にオーストラリアで起きた一家殺害事件を題材とし、1983年に公開された、オーストラリア映画です。

内容のあまりの残酷さゆえにヨーロッパ各地でも次々と上映禁止ビデオの発売の禁止、アメリカでは上映の指定条件が厳しくなったりといわくつきの作品です。

なぜ、このようなことになるのでしょう、内容が残酷だから、確かにそれもあると思いますが。

作品が、社会に与える影響が大きいからではないでしょうか。

つまり、作品に刺激されて類似の事件が多発したり

事件の犯人をある種英雄視したり。

つまり、彼の様な異常者は程度の大小はあれ世の中には、一定数いるのだという事です。

神戸連続児童殺傷事件を思い出して下さい。

1997年に兵庫県神戸市須磨区で起きた当時14歳の中学生による連続殺傷事件事件です。

その事件の猟奇的な犯行、手口など当時かなりの話題にもなりましたね。

特に犯人の中学生が名乗った「酒鬼薔薇聖斗」という奇異な名前もその犯行手口から皆様の記憶にも残っていると思うのですが。

事件解決のその後も色々な検証がなされました。

問題は、彼の性格に起因するもので、人格障害という事になるのでしょうか。

性的サディズムがその成育歴の中で、性的嗜好が改善することなく暴力・殺人という形で、彼の欲望が満たされていった経緯が考えられます

事件のその後、彼の行動や酒鬼薔薇聖斗の名で出された犯行声明文などを通して、いまでも彼の信者というか、信者というような人々がいるのも事実ですし、又類似の事件もその後引き起こされました。

映画『アングスト/不安』が当時上映禁止になったのも、そのような刺激による類似犯の恐れからかもしれません。

つまり、少なからず彼の様な人格に問題のある者は、一定数いるということです。

とくに、性的サディズムは誰でも幼少期には、少なからず経験するもので、加齢とともにそれらが是正されてゆくものなのですが。

家庭環境や取りまく環境により、それが病的レベルになり、更に肥大化した結果、悲劇がおこります。

映画『アングスト/不安』の描いた世界

まさにその異常者を描いたのですが。

あくまでも、異常者側から描いたところにこの作品の怖さがあります。

彼の心情、異常行動に移る彼の心持が彼の言葉で描かれているところがこの作品の特異な世界を再現しております。

余談になりますが、こういう衝動を持った人間は、その衝動を修正できるだろうかと言う問題ですが、行動に移した時点でほぼ困難ではないでしょか。

衝動だけであれば、治療の対象となると思いますが、一度行動に移してしまうと治療はかなり困難なものになると言われております。

治療を進めてゆくと、どうしてもその衝動に焦点があてられ、一時的にもその衝動は強くなり、一度でも行動に移してしまったものは、衝動を抑えきれなくなる危険性が付きまといます。

つまり治療者も怖くて治療に当たれないと。

となると、その衝動を根本的に治療するのでなく、精神科医あるいは心理臨床家によって強力に蓋をしていまうということが行われます。

そう考えると、神戸連続児童殺傷事件の加害者は、社会に復帰しておりますが、簡単にその衝動はなくなったと考えにくいですね。

推測になりますが、いまでも治療が続いているのだと考えられます。

当時中学生だった加害者は刑に長期服することなく社会に復帰となりましたが。

その被害者は、永遠にその傷が癒されることはないのでしょうね、実名が報道されたことで、苦しい時間が今も続いていると。

それらを考えると、『アングスト/不安』という作品も、加害者の異常な心理の側から描いた特異な作品ではありますが、いろいろと考えさせられる作品でもあります。

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