2019年10月に渋谷アップリンクで観た映画です
2018年レバノンの女性監督ナディーン・ラバキによる作品です。
レバノンの貧民窟で生活する、シリア人の一家の物語です。
その題名、また劇場で見た予告編からあまり見たいとは思わなかった、作品ですが。
以外にもかなりの良質な作品でした。
中東の貧民窟という私たちが普段見聞きすることのない世界。
いかに、日本が平和な国であることを実感します。
中東の貧民窟で生活する子供たちの実態。
われわれ極東といわれる島国に住んでいるものには、なかなか伝わってこない出来事ですが。
その実態は、かなり深刻と言えます。
映画の主人公の少年は、レバノンで暮らす、シリア人難民です。
2011年から勃発したシリア内戦により、国内で630万人が避難生活を余儀なくされ、500万人が国外に避難している状態です。
さらに、難民を苦しめているのは、戦闘の激化、長期化により必要な証明書がもてずにいるということです。
婚姻届や出生証明書、またシリア国外で生まれ、出生届がだされていないシリア難民は無国籍となってしまい、証明書類の欠如から移動、教育その他あらゆる場面で不利益をうけてしまいます。
映画の主人公の少年は、まさにそんな明日のない生活を余儀なくされています。
映画のなかでも、街中で粗末に扱われる子供たちが多く出てきます。
学校にもゆけず、家族の生活のために、あらゆる方法でお金を稼ごうとする子供たち。
不衛生な生活環境。
そんな環境にいる子供たちを食い物にしてしまう大人たち。
題名からすると、いかにも明日の見えてこない世界
そんな感じをいだいていたのですが、見事に裏切られました、よい意味で。
確かに現実は、そうとう厳しく、明日も見えなく、夢も持てない。
それほど厳しい世界なのだと映像からは、想像されるのですが。
やはりそこには、作者つまり監督やカメラマンやスタッフたちの優しいまなざしというものが、感じられます。
だからこそ、厳しい現実のなかでも決して絶望感に打ちひしがれるだけの作品とはなっていません。
私たちが映画を見る時期待するもの
明日がある、ほんのわずかでも夢がある、そんな映画を期待するのではないでしょうか。
この作品は、十分期待に応えてくれます。
よくご都合主義的なハッピーエンド映画があるのですが。
この作品は、違います。鑑賞後に明日への期待、そんなものを残してくれます。
主人公、12歳の少年ゼインのひたむきな姿、半歩でも、前に進もうとする姿に感動するはずです。
現実は、本当は厳しく、残酷なものなのでしょう、しかしそれではあまりにも救いがないですよね。
わずかでも、夢を持たせてくれる、そんな映画をわたしは愛します。
ミニシアターの良さ
それは、つまり本作の様な作品に出会えることです。
おそらく、商業的には成功しないであろう地味な作品とか、話題性に乏しい作品、扱う内容が少数的弱者であったり、問題提起をする作品であったり。
しかしそんな作品群の中にも本作のような、きらりと光るダイヤモンドを見つけた時は、本当に映画って素晴らしいなと感じます。
決して自らは体験することはないだろうと思える世界、また日本という島国では感じることのない遠い世界。
それらを映像として体験することができるのです。
これからも、本作のような作品に出会えるよう、足しげく映画館にかようことにしましょう。
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