台湾ニューシネマの名匠ワン・トン監督の傑作『バナナパラダイス』(1989年作)が公開
新宿K´sシネマにて2020年9月より
K´sシネマ恒例の台湾巨匠傑作選2020で今回の目玉作品『バナナパラダイス』が公開されました。
作品は、中国大陸から台湾に渡った男の物語です。
時は、1949年から四半世紀にわたるドラマです。
中国大陸からより良い生活を求めて、国民党軍に紛れ込み台湾に渡った主人公。
まさに、戦後のどさくさと言う表現がぴったりの中での悪戦苦闘。
冷たい中国大陸から南国を夢見た若者。
まさに、素朴と言う表現がピッタリとはまるような主人公。
また、彼を取り囲む人々もおおらかで素朴な人々。
普通の人が普通の生活を送るのが困難だった時代。
1945年に第二次世界大戦が終わり、中国大陸では、国民党と中国共産党の戦いが行われたころ、国民党は1949年に200万人ともいわれる人々を連れて台湾に渡ったのですが。
そんな大きな時代の流れの中で、如何に主人公が困難の中で生き延びたか。
それを決して大げさでなく庶民の生活感覚で描いております。
台湾という温暖な地域と大らかな人々、それらが合わせてこの映画の主人公でしょうか。
『バナナパラダイス』のバナナ
主人公が、憧れるのがバナナです。
いまでは、ごく当たり前に手に入れられますが。
当時は、流通していた地域は限定的で、台湾バナナは日本の統治下で栽培がされ始めたもので、台湾はバナナ成育の条件である気候には寒かったのですが。
その分収穫には、フィリピン産バナナが8か月で収穫できるのに対し、台湾では12,3か月かかり。
その分じっくり成長するため、味、香りが濃くなり。
それが人気の一つでした。
日本では、1955(昭和30年)頃まで台湾バナナは「高級品」であり、庶民がそれを購入できるのは見舞いの時と限られていたくらいです。
主人公が夢に抱くバナナが象徴的に用いられております。
この作品の魅力は、歴史に翻弄されながらもひたむきに生きる庶民の姿です。
決して清潔とは言えない生活環境や習慣。
つい現在と比べてしまうのですが。
それらすべてが偽らざるところとして作品の魅力になっているのではないかと。
できれば、DVD化されて多くの方に見て頂きたい作品です。
コメント