消え去る文化なのか?
2019年渋谷ユーロスペースにて鑑賞した、『台湾、街角の人形劇』というドキュメンタリー映画です。
そこに描かれているのは、台湾の伝統芸のである、布袋戯(ほていぎ)という人形芝居の人形師である、人間国宝チェン・シーホワンを10年間にわたり取材したドキュメンタリーです。
布袋戯はおもに街角のそれも屋外で演じられることが、ほとんどの様です。
日本だと、紙芝居の様だともいえます。
ただ、違うのは紙芝居は聴衆のほとんどは、子供であったと思うのですが。
娯楽の少なかった時代、まさに人々は楽しみを求め、またそれに応えるべくして、広まってきた『布袋戯』
『布袋戯』は、まさに大人から子供まで老若男女問わず、大衆芸能として、愛されてきました。
まさに、台湾が誇る伝統文化であり、いままでよく残ってこれたと思います。
それは、チェン・シーホワンの執念ともいうべきか、その人形を扱うしなやかさとは裏腹のエネルギーを感じます。
それでいて非常に物腰の柔らかい紳士で、彼を慕う外国人の弟子にも余すとこなくその技術を教えます。
『布袋戯』の起源は、17世紀中国福建省とされ、台湾、インドネシア等に伝わり、現代に至っております。
同じ人形劇としては、日本ですと文楽(人形浄瑠璃)がそれに近いと思うのですが。
驚くばかりの芸術性
大衆芸能ですから、ストーリーはそんなに込み入ってないのですが。
驚くのは、人形師の操る人形の素晴らしさ、技に思わずうなってしまいます。
そして、演じられるときには、楽隊の生演奏付きです。
まさに、路上ライブですね。
それがまた、驚くべきレベルで演じられるのです。
日本の文楽もいまでも地方では、村祭りなどで演じられ伝承されているケースがあります。
これらの技術を会得するのは、並大抵ではありません。
しかし、民衆はその鍛えられた芸能を見て楽しんでいたのです。
文明の功罪
やがて、ラジオそしてテレビと庶民の娯楽は変化してゆきます。
なぜか、伝統芸能といわれるものと比べると陳腐な感じがするのですが。
鍛え上げられた、技術、まさに本物ともいうべき台湾人形劇。
たとえ映像でも、それに触れられたことは、大きな喜びです。
しかし、消えゆくものなのだろかと思うと。
国家が保護すべき
そのように思えてなりません。
昔に戻る訳にはゆかないのですから。
では、消えゆくままにさせておくには、あまりにももったいない気がします。
やはり、国としての保護政策が必要になるでしょうね。
日本における文楽の場合は。
まず、上演の場として、大阪に国立文楽劇場があり、定期的な公演をおこなっております。
また、養成施設としても国立劇場研修生制度があり、後継者の育成に努めております。
昔のような、活気を取り戻すということは不可能ですが。
伝統芸能を絶やさず後世に伝えてゆくことは、大きな意味があると思うのですが。
ドキュメンタリーを見る限りでは、まだ保護や助成が足りないのではと思ってしまいます。
80歳を超えた古老チエン・シーホワンが、精力的に海外公演を行い、高い評価を得て孤軍奮闘している姿が画面に映し出されているのをみると、その思いが強く湧き上がってくるのですが。
『布袋戯』がなくなることなく、人々の泣き笑い、生きた人間の温もり、多くの喜びを伝え続けてゆくことを切に願って止みません。
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