現実と非現実
2019年監督田中征爾氏による日本映画作品です。
かなり評判になった作品で、2020年1月渋谷アップリンクにて鑑賞いたしました。
2019年見逃した作品という特集上映です。
良くできている作品であり、また着想も面白いと思います。
しかし、銭湯が反社会の殺人、あるいは処刑の場になるというのは非現実的と言わざる終えません。
その意味では劇画的とも言えるのではないでしょうか。
それほど日本社会には映画の題材となるインパクトのある事件が少ないのかな。
それはある意味平和であるということで、決して悪いことではないのですが。
ただ、この舞台がアメリカならありうるだろうなと感じるのですが。
ただ、この日本でありうることだろうかと言うと、非現実的というか、あまり見るものにとっては説得力がない様に感じてしまうのですが。
映画は、作り物ではあるけれど
でもそこには、ある程度現実感というか、そんなことが起こってもおかしくないということでないと、作品に作り物感が漂ってしまいます。
そういう意味では、本作品は劇画調と言わざる終えないのでは。
しかし、それらをさしおいても本作品の放つ魅力とは。
作品に出てくる二人の若者がいいです。
一人は、東大を出てパート・アルバイトで生活する青年。
もう一人は、殺し屋を生業とする青年。
ただ、殺し屋を生業とすると言うと日本ではあり得ないとまではいわないですが、説得力が今一つのような感じが出てしまいます。
その辺が劇画調の感が否めないのですが。
漂う若者たち
この二人の青年に今の日本の雰囲気を感じてしまいます。
彼らは、特に目標などもなくただ漂うように生きている。
会社とか、社会の組織に組するのではなく。
それでいて怠け者ではなく、ひたむきに生きている。
彼らを見てるとモラトリアムという言葉を思い出してしまう。
しかし、彼らに問題があるというよりも、今の時代の空気というものを感じてしまう。
社会全体がモラトリアムとでも言うべきか。
押し寄せる外国人
もはや、良い大学を出て安定した生活という幻想もなくなりつつある。
職を求めて海外から押し寄せる外国人に職を奪われることもあっておかしくない時代だ。
そのなかで、我々は、なにに価値観を見いだし、なにを目指したら良いのかわからなくなっている時代。
そんな時代の空気をこの作品の二人の若者は、よく表している。
若者に限らず、壮年、老人それぞれが手探りの状態だ。
ひとりひとりが、その答えを見つけなければならないと思う。
この作品を見て、ストーリーと関係のないところで、今の日本を感じさせてくれた。
皆さんはどう思うだろうか。
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