舞台の設定が絶妙です、大阪西成区、日本の闇を凝縮したような街。そして、そこにうごめくひと、ひと。現代日本社会で、何が進行しているのか、問題は一つではなく、いくつかが同時進行しているのですが。そんな現状を映像化することに、この作品は、成功しております。
なぜ、大阪が舞台なのか。
映画の舞台に、大阪西成区を選んでいる。
おそらく、ここが、今日本で一番格差社会を実感できる場所ではないでしょうか。
日本維新の会の躍進を見てもわかるように。
大阪には、今負のエネルギーが充満しているように思えてならないのですが。
作品は、その大阪の舞台を効果的に使っています。
映画には、その主題たるキーワードがあるものですが。
格差社会、自殺志願者と快楽殺人、外国人労働者、ALS患者とその家族、SNSとそれに群がる人間の闇。
このキーワードで作品を作るとしたら、映画『さがす』になる。
ほぼ、絶望の淵にいる人たちを通して今の日本社会を映しだす事に成功しています。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)とその家族の紡ぐ世界。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)、つまり手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。
そして、有効な治療手段のない難病です。
意識がはっきりしているだけに、つらい病です。
やがて、寝たきりになり呼吸が困難になった時に、家族と本人は、人工呼吸器をつけるかつけないかの判断を迫られます。
つまり、意識ははっきりしているのにただ横になって生き続ける。
一度人工呼吸器をつけたら、医師や家族の判断で外すことはできません。
本人は、もちろん自らはずす力もありません。
主人公は、そんな病に侵された妻とどう対峙したのか。
その判断は、正しかったのか間違っていたのか。
その後、主人公の取った行動は。
こんな流れで、物語は進んで行きます。
あえて重たい課題を映像にすることで。
今の、日本の抱えてる問題をあぶり出しています。
けっして、それは見ていて心休まることではないのですが。
あえて映像化することで、いま日本で何が起こっているのか。
一件穏やかそうな日常の下に隠された問題が、浮かび上がってきます。
その意味でも、冒頭にも触れた、大阪西成区という舞台設定が生きてきます。
繁栄が、陰りを見せ始めた日本。
その陰で、何が広がっているのか、作品から確かめてみては。
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