国立アーカイブ『東宝の90年』から1939、1940年制作の作品を鑑賞、かつての日本の貧しさと現代の繁栄、そんなことが浮かんでは消え。そして、これからどうなるんだろう。答えは、見えてくるんですが、繁栄の時代を知っている者には、悲しいですね。
1940年代の2作品から見る今の日本
今回の企画http://nfaj.go.jp/exhibition/toho202209/
その中でも、初期の作品から。
戰ふ兵隊(66分・35mm・白黒)
東宝教育映画秀作選(計103)
すて猫トラちゃん(21分・35mm・白黒)
卵は語る(18分・35mm・白黒)
名探偵ヒロシ君(35分・35mm・白黒)
こんこん鳥物語(29分・35mm・白黒)
の2作品を鑑賞。
いずれも1939年と1940年代というかなり前の作品。
特に戦う兵隊は、戦時中の従軍ドキュメンタリーでかなり貴重。
さらに、戦意高揚の軍の方針に合わず、公開されなかったいわくつきの作品で。
それだけ、大東和戦争における、中国大陸の日本軍の様子は、興味深い。
大本営発表と違い、兵隊さんは決して勇ましくもなく。
荒涼とした中国の大地での戦いが、延々とドキュメントされる。
近代戦とも思えない、どこか古めかしい武器。
食事に苦労する様。
どこか切なさが、画面から伝わる。
当然、上映の許可はおりなかったのもうなずける。
戦後の貧しさから見えてくる日本。
戦後の荒廃した日本やまだ日本が、貧しさを抱えていた頃を感じさせるのが、二本目の東宝教育映画傑作選。
戦後まもない渋谷の風景や、浮浪児たちの群れ。
久しく浮浪児なる言葉を聞かなくなった。
いわゆる、戦争孤児たちのことで。
戦後の東京には、あふれていた。
今の繁栄からは想像もつかないのですが。
かつては、そんな貧しい国だったのです。
でも、どこか人間らしさを感じさせるのですが。
この後やってくるのは、戦後復興から東京オリンピック(1964年)に向けた高度成長期の時代。
日本の成長は、その後バブル経済を生みやがて崩壊するまで(1990年代前半)続きます。
都市部への急激な人口の流入、経済成長による所得増加。
消費が美徳とされる時代が続きます。
約30年間の間に、庶民の生活は変わり豊かに、そして消費と貯蓄と相反するものもできた時代。
1940年代の映画作品からは、想像もできない時代がやって来たわけです。
貯金を切り崩している現代
では、現代はどういう時代かというと。
過去の貯蓄をきりくずして生活している時代。
経済の成長期が30年続いたのも、奇跡です。
人々は、その間に少なからず貯蓄ができたわけで。
日本経済が、下降線をたどっても、人々の生活はなんとか成り立っています。
非正規労働者が、全労働者人口の50%に達しているわけですが。
正社員になれず、あるいは、正社員から滑り落ちたという人も多いですが。
正社員になりたくない、バイトのほうが気楽でいいという若者も多数いるのも事実。
まあ、高度成長期と違って、正社員もせちがらく成果を求められる時代。
ブラックな企業も多いし、かつてほど企業に余裕がないから時間をかけて育ててなんてこともしませんし。
非正規でいる若者にも同情する点はあるのですが。
しかし、非正規でいられるのは、親世代が、お金を持っているから。
でも考えてみてください。
非正規の彼らが親世代になった時、はたして貯蓄は残っているだろうか。
そう考えると、現代は貯蓄を切り崩して生活している時代で、やがてそのお金も底をつくという事。
そんな時代を生きている事は、間違いないようで。




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