東京ドキュメンタリー映画祭2022、昨年のグランプリ作品『なれのはて』が良かったので今年もと期待したのですが、『アダミアニ祈りの谷』は今日的国際テーマとでもいいますか、ちょっと肩透かしをくらったかんじでした。説明的部分がもっとほしいです。
長編部門のグランプリ作品です。
舞台は、ジョージア。
かつては、グルジアといった旧ソ連邦のパンキシ渓谷に住む、イスラム教徒のお話。
ここでもうめげてしまうのです。
そう言うと失礼極まりないんですが。
なにせ極東の島国日本からすると、あまりにもかけ離れた世界のお話。
主人公といいますか、彼女は、ここで生まれ、チェチェンに嫁ぎ、やがて紛争のためこの渓谷にもどるわけですが。
物語といいますか、ドキュメントは、この女性を中心にして、チェチェン紛争からのがれた難民とパンキシ渓谷。
彼女の二人の息子とその後。
これらが、ほとんど説明やナレーションなく登場人物の会話中心で進むんですが。
とにかく、全体像が見えてくるまで、じれったい。
かの地やその周辺諸国に住んでいれば、理解できるのだろうが。
チェチェン紛争ですら、対岸の火とまでは言いませんが、日本にいては今ひとつピンとこない。
そこで、難民となったイスラム教徒が、パンキシ渓谷に大勢避難する。
そこには、当然イスラム教徒過激派も潜んでいるわけで。
ジョージアは、キリスト教国。
ここで、少し問題が見えてくる。
彼らは、この谷では、けっして歓迎されてはいないということ。
そして、主人公の女性の息子二人は、どうやらイスラム教過激派の掃討作戦で亡くなったという事。
ただ、これは次男の話で、長男はどうして亡くなったのか最後までわからない。
この作品は、一体誰に向けて作ったのだろう。
そう思えてならない。
日本人に向けたのなら、もう少し説明的部分がないとよくわからない。
イスラム教過激派とそれに触発される、穏健的イスラム教徒の青少年の問題も垣間見える。
これは、ヨーロッパでは、近年のテロの問題も含めて深刻なんだろうけど。
もう一つはっきり見えてこない。
息子を亡くした母親が、残された家族と過ごすパンキシ渓谷。
地元のキリスト教徒たちとの壁も見て取れる。
彼女の次男が、亡くなった原因も究明されることなく過ぎてゆこうとする日常。
そんな悲劇に見舞われながら。
彼らの生活は、かなり満たされているようにみえてしまう。
その生活ぶりは、お金持ちというわけではないけど。
なぜか、衣食とも足りているという感じがする。
彼ら、彼女らは何を問題として抱えているのかが、最後まで迫ってこない。
この作品が、なぜ長編部門のグランプリなのか疑問が解消されないまま、映画は終わってしまった。
映画『アダミアニ 祈りの谷』公式サイト:https://tdff-neoneo.com/lineup/lineup-2929/




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