まさに自らのアイデンティティの確立とでも言ったらいいのか。『少年たちの時代革命』は、時代の大きなうねりの中で、自らの確立の戦いである。中国化の波に抗う少年たちの姿は、危なっかしいくもあり、厳しい現実との戦いを勝ち抜こうとしてもがいている。
冷めた大人と、自由を求める若者
香港返還からはや13年がすぎようとしている。
作品は2019年作だからいまから約3年前の香港が舞台。
自由を求める若者達のデモ。
そこに参加する若者たちの姿。
登場人物それぞれに、立場が違うし育った環境も。
共通するのは、ただ自由を求める叫び。
この10年あまりの間に、香港に対する締付けがきつくなったのだろう。
大人たちは、若者たちの叫びに共感しつつも。
「別に中国でもいいじゃないか、生活できれば、多少の不自由は我慢する」が本音。
そう、時代の流れと大国には逆らえないのが現実。
かの大スター、ジャッキー・チェンですら中国にすり寄っている。
彼の父が、かつて中国共産党から逃れて、香港に来たということなどお構いなしに。
そう、大人は生活が全てなのだ。
イデオロギーや言論の自由は二の次。
デモの主体は、返還後の世代。
20代前後の若者たちが、デモの中心。
そう、彼らは、香港でいかに生きてゆくかを真剣に考えている、いや考えざる負えない。
海外に出ていかれるものは、ほぼそこに活路を見出す。
しかし、国内に残らざる負えないものもいる。
そう、デモの中心は、まさにそんな若者たち。
そんな、香港に対して中国本国の人々は、好意的ではない。
彼らにとっては、一足先に繁栄を手に入れた香港に同情などしない。
いやむしろ、自分たちが圧制の中で苦労しているときに、さんざん繁栄と自由を謳歌したではないか。
だから、香港の若者たちには、本国中国での生活などという選択肢はない。
出るに出られない若者たちが、デモに参加する。
そう、ここでしか生きて行けないから。
二者択一しかない若者たち。
辛い現実だ。
海外に出られるならとっくに出ている。
出られないからここに残って、道を探る。
しかし、20代前後なら十分海外での選択肢も選べるはずだ。
まだ、香港に可能性を求めているのだろうか。
海外に出るといってもそう簡単ではない。
財力のない者にとっては、厳しい道だ。
ただ、若さを持ってすれば不可能ではない。
映画は、そんな彼らの苛立ちが、伝わってくる。
彼らは、力強い。
確かに生きている、自らの道を自ら切り拓く運命にある。
彼らを応援したい。
デモに参加して、自由を勝ち取れと言っているのではない。
自らと向き合い、道を切りひり開いて行こうとする姿にである。
映画『少年たちの時代革命』公式サイト:https://www.ridai-shonen.com/
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