骨のある映画監督が、いなくなってしまった。そんな昨今の日本映画の実情が悲しくなるくらい、若松孝二の存在は大きい。反体制の視点から描くその作風には、世に流されないアウトーのような魅力があった。そんな映画監督若松孝二の実像に迫る作品。
エネルギーのかたまり 若松孝二
代表作は、『キャタピラー』『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
社会派監督というべきなのか、そんなカテゴライズが似合わない、スケールの大きい監督です。
氏は残念ながら、交通事故で2012年76歳でなくなっておられます。
作風は、骨太で、あくまで反体制の視点で描く姿勢を崩しません。
『キャタピラー』は、太平洋戦争の帰還兵を描いた物語。
四肢をなくした帰還兵とその妻の息詰まる生活を描いて、国際的評価を得ました。
東日本大震災と福島原発事故を描くと、話しておられたのですが、残念です。
あれだけの震災とそれに次ぐ人災。
誰かが、総括しないとと思うのですが。
それだけの視点と力をもった監督を失ったことが残念です。
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』では、連合赤軍の実態をいや、人間の本質に迫るような視点で、見事に歴史の分岐点になった事件を総括しております。
『17歳の風景 少年は何をみたのか』のメーキング
本作『67歳の風景 若松孝二は何を見たのか』は監督の作品のメーキングとも言える作品です。
メーキングでありながら、一つの劇映画ともいえるそんな作品です。
『17歳の風景』は、母親をころした少年が、ひたすら自転車で北を目指す作品。
実際にあった、少年の母親殺しを題材として、若松流に解釈して行くロードムービー。
撮影は、十数人の小さなグループで、主に軽自動車にカメラを積み、ひたすら走る少年を追いかけてゆく。
ただそれだけなんだけど、これが面白い。
面白いというより、興味深い。
映画というのは、つくづく職人が作るものだと、あらためて感じます。
若松監督のこだわり、クルーとの衝突。
あらゆるものの結実として、一つの作品が出来てゆく行程が、面白いです。
間違いなく、若松孝二という人間が、見えてきます。
それは、飾りもない、むき出しのそれでいて、何が彼を突き動かすのか。
そんな思いが尽きない作品に仕上がっています。
ですから、なおさらの事、若松孝二と言う監督が亡くなったことが、残念です。
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