ーネタバレを含みますー
心と体がまだまともに成熟していないのに、才能に恵まれた人は世に出て喝采を受けることがある。映画『エルヴィス』はそんな男の才能にふりまわされた一生を、はかなくも色鮮やかに再現している。確かに、一瞬であるかもしれないが、他を寄せ付けない輝きが。
アメリカ南部メンフィス
そこは、エルヴィス・プレスリーの出発点となった町。
あまりにも、有名なんだけど。
何の変哲もない、アメリカの南部の駅のある田舎町の風情。
ああ、こんなもんだったんだと改めて感じさせてくれるのは。
ジム・ジャーメッシュの『ミステリートレイン』https://himabu117.com/archives/3925
若き日の、永瀬正敏と工藤夕貴のカップルの珍道中風のエルヴィスの足跡を訪ねるすがたが、面白い。
そんな、脱線はともかく、本編は人間エルヴィスの足跡をたどる。
黒人音楽にルーツのあるエルヴィス
前半は、ともかくエルヴィスの音楽のルーツ。
そして、一世を風靡す彼の演奏スタイル。
あきらかに、黒人の演奏スタイルそのものだし。
それを白人がやることの驚きが、当時の音楽シーンを席巻する。
音楽シーンばかりでなく、社会現象となる。
そのセクシーな、腰を使ったステージパフォーマンスに当時の風紀委員会からクレームが。
それ自体が、年代を感じさせるのですが。
当時の保守的勢力と倫理感の強かった時代。
今から見ると、それ自体が信じられないのですが。
根強い差別と、白人が黒人音楽をまねすること、いろんな要素が、ロック歌手エルヴィスに向けられる。
前半は、このあたりが、子気味よく短いカットの連続で見せてゆく。
その様は、まるで予告編でも見ているかのようで、落ち着かない。
もっと、腰を据えてエルヴィスの歌が聞きたいのに。
このままラストまで行くのか、だとしたら駄作だなんて考えていると、後半に入りガラッと変わる。
ラスベガスのインターナショナルホテルでのステージ
ここを中心に後半は、思う存分エルヴィスが暴れる。
見事期待に応えてくれる。
彼のマネージメントをする、トム・パーカー、ベガスのカジノに多額の借金があり、エルヴィスの収入の50%を搾取した男。
分かっていながら、彼を切れないエルヴィス。
そこには、共依存の図式が見て取れる。
二人だけではない、彼の周りには、一族をふくめて多くの人間が、ぶら下がっている。
そう、エルヴィスを食い物にしている連中。
そんな中で、もがくマザコンエルヴィス。
スーパースターは短命
インターナショナルホテルのステージが、マンネリ化したころ。
過食症と処方薬の過剰摂取から、僅か42年の生涯を閉じる。
ちょうど、ジャクソン5の台頭と入れ替わるように。
マイケルジャクソンが享年51歳で没したことを考えると。
スーパースターの孤独や、過剰のストレスが肉体と心を蝕んでゆく。
なんか、そんなショービジネス界の裏と表を垣間見る思いなのですが。
しかし、なぜエルヴィスがなぜあの時代の人々をあれほど熱狂させたのか。
その答えを見事にスクリーン上に、再現した成功作品です。
贅沢なほどの音響設備の整った劇場で、ライブ感に浸りながら見たい作品です。
映画『エルヴィス』公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/elvis-movie/
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