映画『川っぺりムコリッタ』。自由だ自由だと自由を叫びながら、その実、ものに縛られ、家族に縛られ、これが私達の現実ではないだろうか。それでいて、縛られていることにも気づかない。おおよそそんな私達をあざ笑うような貧乏長屋の住人の物語。
「ムコリッタ」生と死の狭間の時間
仏教用語でそうなのだそうです。
海の近くの平屋の長屋のようなアパート。
田舎では、よく見かけるのですが。
さすが、築年数は古い建物が多く。
現在では、低所得層の住居という感覚でしょうか。
物語は、そこの住人たちのお話。
世の中の繁栄とはおおよそ縁のなさそうな面々。
とにかく、貧乏なことをなんとも思わない人たち。
そして、一人暮らしだったり、家族持ちもいても、どこかなにかに縛られるということのない人たち。
そんな、空間にこれもまた生まれた時から孤独と向き合い生きて来た、一人の若者が紛れ込む。
そんな設定から物語がスタートします。
題名からして仏教的死生観に溢れているのかな、とも思いますが。
そうでもなさそうで、おおよそ日本人の典型的な死生観とでもいいますか。
いわゆる「千の風になって」的な死生観。
しかたないですよね、日本人は、無神論者が多いですから。
信仰は、冠婚葬祭のときだけ。
だけど、死については、何らかの答えがほしい、でないと落ち着かない。
となると「千の風になって」となるのは、致し方のないこと。
無印良品的生活の持つ魅力
長屋の住人達は、おおよそモノのない生活といいますか、貧乏だからなんですが。
それでいて、貧相な感じがない。
いや、モノのない生活が、これほどまで素敵なんだと感じさせます。
このあたりを上手くイメージとして商品化したのが、無印良品なんだろうな。
ミニマリストなんて思想もそうなのかな。
だけど、無印良品のものに囲まれて、とにかくMUJIが大好きで、そんなMUJIに溢れた生活というのがおおよそシンプルだとも思えない。
そう、ものの溢れた、時代では、おおよそミニマリストなんて無駄なこと。
どうしたって、ものが欲しくなり、生きていれば、ものは増えていくばかり。
嘆くことはない、それが人間だ。
そう自分に言い聞かせているんですが。
まあそんな感じで、ミニマリスト貧乏な長屋の住人の生活が展開してゆきます。
ものあふれた現代だから、シンプルな長屋の住人の生活に安堵感を覚えるのでしょうか。
まさに、題名にあるような「ムコリッタ」。
生と死の狭間の時間の物語というのが、ぴたっとハマっているようです。
映画『川っぺりムコリッタ』公式サイト:https://kawa-movie.jp/
コメント