香港ノアールとは
それまで、カンフー映画が主流の香港映画界で起こった新たな流れが、香港ノアールと呼ばれます。
『男たちの挽歌』は、その記念碑的作品でその後多くの作品群が新たな流れとして生み出されます。
まさに、香港が中国に返還される前の自由闊達な世界が展開されます。
以前から興味はあったのですが、なかなか接する機会がなかったので、今回初めて『男たちの挽歌ⅠⅡ』を鑑賞してみました。
『男たちの挽歌』1986年製作
監督 ジョン・ウー
出演者 チョウ・ユンファ
ティ・ロン
レスリー・チャン
作品は、かつて昭和30年代の日活アクションや昭和40~50年代の東映ヤクザ映画を彷彿とさせます。
見ていてなんかのどかなんですよね。
主題は、男気とか義理・人情の世界で、今どきの作品にはない懐かしさを感じます。
それは、つまりテレビドラマの『水戸黄門』の世界に近いというか。
ドラマの重要な場面になると必ず主題歌が流れてくるとか、大げさな演技とか、まあ40年近くも前の作品ですから多少は大きな気持ちで鑑賞しましょう。
何と言ってもレスリー・チャンですね
この作品を通して世界にはばたいた俳優は幾人かいるのですが、私にとっては何と言っても、レスリー・チャンでしょうか。
この作品の後に素晴らしい活躍を見せてくれます。
1990年 ウォン・カーウァイ監督 『欲望の翼』
1993年 チェン・カイコー 監督 『さらば、わが愛』
1997年 ウォン・カーウァイ監督 『ブエノスアイレス』
特に、『さらば、わが愛/覇王別姫』は忘れられない作品です。
一本の映画なのですが、まるで三本の作品を見てるかのような壮大なドラマだったのを記憶しています。
レスリー・チャンは、2003年(46歳)で自殺してしまうのですが、残念で仕方ありません。
中国返還で変わってしまった香港
1997年に中国に返還されてから、危惧していたことが2020年に起こってしまいました、中華人民共和国による「国家安全法」の施行です。
一国二制度の建前を保っていた中国も今回コロナ騒動に乗じてと言うべきか、外出自粛反対デモがやりにくい時期であり、諸外国も中国の法の施行に対して声を上げる余裕のない時期を見計らっての今回の法案成立です。
そして、香港総選挙前と言うのも絶妙なタイミンクです、選挙では民主化勢力の大勝が予想されたので、その前に手を打ったのです。
香港市民の中にはすでに、2020年1月~4月にかけて2000人が台湾に移民しました。
この現実の中で香港は、どうなるのでしょうか。
各国とも自国のコロナ対策で手一杯の中で目が離せない問題です。
かつて香港ノアールと呼ばれ世界の映画界を席巻したあの自由な作風、空気はもはや作品の中でしか味わえないのでしょか。
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