コロナ禍での初の歌舞伎座顔見世興行、4部制と演目は並んでいますが、決まりきった役者がお馴染みの役を演ずる、2部、3部を外して、1部と4部をおすすめします。チャレンジャーとしての緊張感が感じられ、何をやってくれるのか期待させてくれます。
演目とその詳細
【演目と出演者】
第一部は『蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)』。源頼光主従の土蜘蛛退治を題材にした変化舞踊で、市川猿之助が五役の早替りを見せながら踊る。
第二部は『身替座禅(みがわりざぜん)』。狂言の大曲「花子」をもとにした舞踊劇で、尾上菊五郎演じる恐妻家の大名山蔭右京と奥方のやりとりが笑いを誘うユーモラスな一幕。
第三部は『一條大蔵譚 奥殿(いちじょうおおくらものがたり おくでん)』。松本白鸚演じる一條大蔵長成は平家全盛の世に密かに源氏に心を寄せ、二面性のある演技がみどころ。
第四部は『義経千本桜 川連法眼館(よしつねせんぼんざくら かわつらほうげんやかた)』。中村獅童が佐藤忠信と源九郎狐の二役を演じる人気場面で、清新な配役にも注目。
【公演情報】
令和2年歌舞伎座11月公演
「吉例顔見世大歌舞伎」
11月1日~26日 (休演日:6日、18日)第一部(11:00開演)
『蜘蛛の絲宿直噺』
市川猿之助五変化相勤め申し候第二部(13:50開演)
岡村柿紅 作
新古演劇十種の内『身替座禅』第三部(16:45開演)
『一條大蔵譚』奥殿第四部(19:30開演)
『義経千本桜』川連法眼館公演の詳細は、歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人」にて確認。https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/692/
歌舞伎座公式サイトより:引用
第一部(11:00開演)『蜘蛛の絲宿直噺』市川猿之助五変化相勤め申し候
澤瀉屋を背負って立つ現市川猿之助。
猿之助一座が第一部に登場しました。
早変わりはこの家の得意とする分野。
いかにそれを芝居を崩さず、歌舞伎の持つケレンという要素の中で、昇華できるか見ものです。
近年劇画などを題材とした作品で、新たな観客を引き込んだ猿之助一座。
出演俳優の多くが国立劇場俳優養成所出身者。
そんな一座の命題は、常に観客に受け入れられる芝居を演じ続けること。
この一座には昔から、そんな緊張感が舞台にあふれております。
重鎮と呼ばれる役者たちが、お馴染みの芝居、おなじみの演目でお茶を濁す中、チャレンジしてきました。
この一座の魅力は、常にチャレンジャーであり続ける姿勢です。
顔見世興行という舞台で、古典の作品の中にいかに彼らのチャレンジャー精神が生かされるか。
そんな期待を抱かせる演目です。
第四部(19:30開演)『義経千本桜』川連法眼館
お馴染み四の切と呼ばれる演目です。
この作品は、先の猿之助一座が先代猿之助の時代に、国立劇場の要請で宙乗りという演出を復活させた演目です。
その後、この演目は猿之助一座の看板演目になったのですが。
今回は、猿之助一座ではなく、中村獅童が主役を演じます。
それもお馴染みのラスト宙乗りなしで。
これもまた見ものです。
中村獅童はいわゆる名門の出ではないので、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。
若い時は、いわゆるお役が回ってこない状況だったわけで。
そこで、彼は自らを売り出したのです。
そう、映画のオーディションを受けまくり。
やっと手にした映画『ピンポン』(2002 年)での怪演で一躍脚光を浴び、その後一座でも役がつくようになりました。
いわゆる、なんの苦労もなく主役が演ぜられる御曹司とは違い、自らの力でここまで登って来た役者さんです。
宙乗りが有名な四の切ですが、それは確かに良し悪しがあるのもたしかです。
ラストに宙乗りがあるため、そこにばかり、目が行ってしまい。そこまで積み上げてきたお芝居の味というものが、宙を舞うことで飛んでしまうとでもいいますか。
とにかく宙乗りばかりが印象に残ってしまう感があるのは確かです。
今回獅童は宙乗りはやりません。
それは、彼の師匠である故十八世中村勘九郎がそうであったように、宙乗りをしないラスト花道の引っ込みを飛び六法という形で演じます。
宙乗りのような、ラストの異様な盛り上がりはありませんが、逆にその盛り上がりが壊してしまうお芝居というものを嫌い、一つのお芝居としての完成度が余韻に残る演出となります。
さあ、その力試される中村獅童どう演じてくれるでしょうか。
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