田中邦衛さんの訃報に接し、国立映画アーカイブで上映された主演映画『ウホッホ探検隊』を見ました。多くの作品に出演してきた田中邦衛さん、忘れられないのは1981年のテレビドラマ『北の国から』、この二作品の時代と現代とをあらためて考えてみたいと。
1980年代日本映画ー試行と再生
このシリーズで田中邦衛さん主演の『ウホッホ探検隊』を見てきました。
田中さんの訃報で御年88歳ということで、35年前の作品となる『ウホッホ探検隊』1986年作、監督根岸吉太郎、脚本森田芳光。
何処か不器用でシャイな役どころを得意にしてきた人です。
『ウホッホ探検隊』
男の子が二人の四人家族の物語です。
夫である田中邦衛は妻(十朱幸代)や家族を残して単身赴任しています。
そこで、持ち上がる夫の不倫の物語なのですが。
男と女一筋縄ではゆきません。
ただ、田中邦衛演ずる夫が優柔不断というか、何か大事なことからは逃げている、結局妻が割をくうのかなという展開です。
まあ、ラストはハッピーエンドなのでしょうが。
しかし、作品を見ていて感ずるのですが、息子役の二人、中学生と小学生高学年と思われるのですが。
どことなく不自然な感じが最後までぬぐえませんでした。
日本映画って以外と子供を描くの下手ですよね。
なんというか、大人の頭で考えた子供を子役にやらせているという感じとでもいいますか。
子供そのものという自然感が少ないですね。
子供って、とらえどころのないもの、それを自然に出すのは日本映画はあまり得意ではないようで。
これがフランス映画でフランソワ・トリュフォーあたりが子供を撮ると、「う~ん」とうなってしまうのですが。
『北の国から』
田中邦衛さんの代表作といえば、やはり1981年のテレビドラマ『北の国から』でしょうね。
原作・脚本倉本聰でヒットした作品です。
離婚した夫が子供二人と生まれ故郷の北海道に移住する話です。
離婚の原因は妻の浮気で、ここでも田中邦衛さんはどこか頼りない父親を演じております。
この作品がヒットしたのは、北海道の原野に暮らす家族、質素な生活。
まさに、世を挙げてのバブル景気直前の物にあふれた時代に一石を投じました。
1980年代と今の違いとは。
1980年代は一億総中流と言われた時代。
何となく景気のいい話が聞こえてきて。
ブランド品がもてはやされて。
株価が上昇して、小金持ちが多く出現して。
土地は値下がりしないと言う、土地神話があって。
そこに、抗う形で『北の国から』がうけたのでしょうね。
高価な物が増えるのが豊さの象徴の様な時代でした。
では、現在はどうでしょう、土地神話はあっけなく崩壊して。
正社員が減って、非正規雇用が40%を超えて。
格差社会の出現。デフレ。
では、『北の国から』のような質素な生活が復活したかと言えばそうでなく。
別の形で消費欲を満たす時代では。
100均やファストファッションの出現。
所得の減った分、ものの価格もそのクオリティを下げる形で、物欲だけは健在。
どこか、いびつな社会の出現となってしまいました。
田中邦衛さんの訃報に接し、彼の活躍した時代を振り返る時、この様な事が頭を駆け巡ります。
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