希代の、劇作家であり演出家である「つかこうへい」その魅力ある過去の舞台映像を、両国シアターχの「つかこうへい研究会」の上映で鑑賞しました。あらためて彼の舞台の魅力を感じつつ、つかこうへいの研究がこれからもさらに深まって行くことを望んで止みません。
大分つかこうへい劇団『熱海殺人事件 売春捜査官』
つかこうへい劇団の過去の舞台映像を鑑賞し、つかこうへいを語る会が2021年4/24~4/27まで両国のシアターχにて行われました。
つかこうへいの足跡と活動を考えるとき、前期と後期に分けることができるのではないでしょうか。
まず、1974年につかこうへい事務所をたちあげ1982年に解散するまでを前期。
『蒲田行進曲』が映画になり、大ヒットしたのは1982年でちょうどそこまででしょうか。
後期は、その後つか自身の文筆活動などにより演劇活動はブランクがあります。
1987年の韓国公演ののち、1994年北区つかこうへい劇団、1996年大分市つかこうへい劇団と続いてゆくあたりでしょうか。
今回の舞台映像は、その大分つかこうへい劇団の公演によるものです。
商業的に成功したつかこうへい
私には、そんなイメージがありました。
若くして、テレビドラマなどにその作品が登場したり。
いままでのアングラ演劇のイメージとは違う、新たな流れとでもいいましょうか。
それまでのアングラ演劇といえば、唐十郎の「状況劇場」や寺山修司「天井桟敷」が代表的でありまして。
商業演劇とは一線を画すとでもいいましょうか、あまり儲からない部類にはいるカテゴリーだったのですが。
つかこうへいは、いとも簡単にその一線を越えてしまいました。
しかし、その芝居は今までのアングラ芝居というより、より私小説的になったとでも言いますか。
それまでの唐十郎や寺山修司のもつダイナミックさは影を潜め、どちらかと言うと、私とあなたの物語とでもいいますか、こじんまりした感があり。
私自身はあまり好みではありませんでした。
今回の舞台映像を見て
ブランクあとの後期つかこうへいの仕事ぶりがよくわかります。
よりダイナミックで、挑発的舞台を繰り広げてゆきます。
こちらのつかこうへいは魅力的であります。
長らくつかの芝居を見てきたシアターχのパネリストは、この舞台を「気が狂ったかのような」と表現されておりましたが。
まさにその通りで、出だしからクライマックスのようなテンションで2時間の舞台を駆け抜けます。
見ているほうも、おちおちしてられない。
「そう、これがアングラの熱気なんだよな」そんな舞台です。
転機となった1984年韓国公演
では、ないでしょか。
彼は、このときのことをエッセイ『娘に語る祖国』で自身が在日韓国人二世であることを公表しております。
韓国初の日本語公演であり、当時の金大中大統領による日本文化開放の最初の目玉として、日韓両政府が正式認可した上演です。
この時上演されたのが、『熱海殺人事件 売春捜査官』です。
後期のつかこうへいの活動に、ダイナミズムが加わる要因となったのではないでしょうか。
このあたりのつかこうへいの研究が、もっとなされてもいいのではないでしょうか。
希代の劇作家であり演出家でもある、つかこうへい。
これからも幾度もその作品が再演されることと思われます。
魅力ある、つかの舞台が表れてくることを望みます。
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