人間は平等だと言う、しかし決してそうとは言えない。育った境遇や育てられ方で差が出てくる。だから、この作品の主人公に共感する人はそう多くないような気がする。
1982年製作
バブルに向かう前夜、茨城県の農村部を舞台にした作品。
監督柳町光男、主演根津甚八、秋吉久美子
ある農家のお話。
鹿島臨海工業地帯の建設で、農村がどんどん壊されて行く。
主人公は、農業に見切りをつけてダンプの運転手に。
やがて、覚せい剤に溺れて愛人を殺害。
ずぶずぶの農村の情景
開発で、壊されて行く農村の姿、人々の生活。
そこで、泥沼の様に薬物に溺れて行く主人公。
実に切ないお話。
我慢ということが出来ず、思ったように行かないと暴れ出す主人公。
そこには、浴びるほどのお酒の力が。
やがて、それが薬物に代わって行く。
どうしようもない主人公のお話。

悲しいかな、人間は平等ではない。
それぞれ、人間には、能力、育った家庭誰一人として同じ人はいない。
だから、主人公の様にずぶずぶな人生に溺れてゆく人も家庭も。
移りかわる農村の姿。
より稼ぐ手段を選ぶ、主人公。
稼げる生活は、その稼ぎを費やすことを目指す。
田園風景の道路の片隅にポツンとある、やたらけばけばしいネオンのある粗末な平屋の建物。
その中で繰り広げられる宴。
こぎれいに着飾ったホステス、じゃぱゆきさんの姿も。
男達は、そこでむさぼる様に欲望を満たそうとする。
都会とて同じ構造なのですが、田んぼの真ん中にそんな小屋があるのが、農村部らしい。
人間の切なさを描きつづける 柳町光男
開発が進む農村部では、こんな主人公の環境は珍しくないのだろう。
誰でも、この主人公の様に落ちて行くわけではないのですが。
田舎の窮屈さ、逃げ場の少ない環境を良く描いております。
閉鎖性とでも表現したらいいのだろうか。
都会で生きる者とは違う、閉塞感とそこに生きる人間の切なさを丹念にあぶり出している。
この閉鎖性は、今でもあまり変わらないのか。
若者は、都市部を目指して一極集中が進み。
現代では、もっと違った形になっているかもしれない。




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