作品作りにこだわって、製作費が膨大になって行く。映画の持つジレンマなんだけど、日本映画には、もうそこまでの冒険が出来なくなっている。もともとハイリスクハイリターンの世界なんだけど、限られた枠の中で作られた作品は、結局その範囲内の出来にしかならない。
決められた時間、予算そんな枠を感じてしまう。
題材は、養護施設で育った少年が、母親に会いにゆくロードムービー。
あとは、これをどう膨らませて観客に見せるか。
しかし、みていて歯がゆさばかり感じてしまう。
そう、本気度と言ったら製作者に失礼かもしれないけど。
限られた時間、限られた予算という枠内でできた作品との感想しか湧いてこない。
施設を抜け出した少年が、ホームレスと暮らす。
そんな設定なんだけど。
場所は、千葉県大原漁港に止めた軽トラック。
この設定って、苦しいよね。
都会では、たしかに家出した中学生が、ホームレスと暮らしたという実話はあるけど。
千葉県の漁港で、ホームレスと少年が暮らしていたらすぐ通報されるよね。
それに、彼らが生活の糧を得る方法も難しいのでは。
廃品を集めてスクラップ屋に売りにゆくんだけど。
それも苦しいよね。
確かに都会からの不法投棄が問題となっているけど、千葉県だと君津あたりまでかな。
とにかくホームレスと少年の生活に、真実味と説得力を感じない。
そこに絡んでくる、パパ活高校生も出来すぎてる。
ロケ地にどっかり腰を据えて作った作品には思えない。
車上生活のリアル
作品としては、『ノマドランド』https://himabu117.com/wp-admin/post.php?post=2779&action=edit
アメリカで失業したひとりの女性が車上生活をする話なんですが。
とにかく、一つ一つの日常がさもありなんと納得させられるんです。
特に感心させられるのは、排泄に関しての描写。
別に生々しいというのではないですが、実に微に入り細に入り描いている。
そう、人間の生活には欠かせない排泄という行為。
それが、車上生活という限られた空間でどう処理しているかを丁寧に描いている。
当然物語に真実味が出てくる。
『ぜんぶ、ボクのせい』にたらないのは、この点。
『ノマドランド』の主人公は、中古のキャンピングカーで生活している、それでいての不自由さを見る者は感じる。
方や『ぜんぶ、ボクのせい』は、もっと狭い幌付きの軽トラック。
その荷台で少年とホームレスが寝食を共にする窮屈さは、相当なものだと思うのですが。
そのリアルが伝わってこない。
なので、見終わった後の感想は、先にも述べたように。
限られた時間と限られた予算で作られた作品という事。
残念で仕方ないけど、今の日本映画の現状なんだろうな。
映画『ぜんぶ、ボクのせい』公式サイト:https://bitters.co.jp/bokunosei/#modal
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