国内唯一の地上戦沖縄。この事実と何があったかは、いつまでも忘れてはいけない。映画『島守の塔』は、当時の沖縄県知事から見た沖縄戦が主軸なんだけど、悲しいかなドラマが弱い。このあたりに限られた予算と企画の中でもがく日本映画の現状を見る思いがします。
風化する沖縄戦
大東亜戦争における、唯一の国内における地上戦。
そう、幾度となく映画化はされているのですが。
その悲惨さは、数々の記録映像も含めてまさに筆舌に尽くしがたく。
ただ、戦後70年も過ぎてしまうと、生存者も少なくなりだんだん人々の記憶から薄れてゆくのですが。
それは、とっても悲しいことで、今回のように改めて映画として残そうとする。
そんな意欲は買うのですが。
でもそれと映画の出来とは、別の話で。
そこは、妥協したくないのです。
当時の沖縄県知事・島田叡
前任者が、逃げ出す中、断ることもできるのに知事を引き受けた男。
彼は、結局消息不明となるのですが。
島田叡にスポットを当てたところが、この映画の新機軸だと思うのですが。
残念ながら、ドラマとして弱い。
もっと島田叡という人間を描き出してほしかった。
なぜ、彼は知事を引き受けたのか。
知事として何がしたかったのか、何が出来なかったのか。
もっと鋭く切り込んでほしかった。
そして、迫りくる米軍の戦力の前に追い込まれてゆく日本軍と沖縄住民。
このあたりが、迫ってこない。
そう、画面にアメリカ軍が出てこないのである。
アメリカ軍を描き出すとしたら、とんでもない予算がかかるだろうな。
でもそれが出来ないと、作品として限界が出来てしまう。
このあたりに、日本映画界の現状を見てしまう。
製作委員会という仲良しクラブ
ほとんど日本の映画が、この方式で映画を制作しています。
つまり、協賛企業に一社いくら、いくらと割り振って出資してもらうやり方。
あと、クラウドファンディングという形で、資金をあつめる。
しかし、このやり方だと集められる資金に限りと、協賛企業を多く集めるために通りやすい企画になってしまう。
そう、最初から手かせ足かせで映画を作ってるようなもの。
当然スケールの大きな作品が出てくる訳はなく。
海の向こうでは、映画はハイリスクハイリターンの一か八かの世界。
プロデューサーは、いかに資金を集めるかがその手腕にかかり。
下手に、マフィアの資金に手を付けて焦げさせてハドソン川に浮かぶとか。
これは大げさですが、とにかく一か八かで作られた映画に、製作委員会制作が勝てるわけもなく。
今年もやってきた8月15日
ここに合わせて、沖縄戦の作品をぶつけてきた意欲は、買えるのですが。
あわせて、日本映画の限界を見てしまうのは悲しい現実。
比べるのは可愛そうだけど、同じ太平洋戦争の日本軍を描いた、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』https://himabu117.com/archives/839と見比べてほしい。
同じ日本軍の戦いを描いてながら、ドラマが深いのがお分かりになると思う。
世界のイーストウッドとくらべるのは酷というなかれ。
そう、世界で戦ってゆく作品を私達は、求めているのです。
でないと、映画に夢やロマンを持てない。
映画『島守の塔』公式サイト:https://shimamori.com/
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